四国遍路⑭

いとう茂

2015年03月22日 22:16


途切れ途切れの記憶をつなぎながらの四国遍路。
途切れずに札所をつないでいこうと思います。
次に行く計画も立たないままの回想です。

水井橋を渡り遍路道を進みます太龍寺までは
4キロ余り、休み休みでも2時間足らずで到着の予定、
でしたが・・・・・・。
どうも足取りが重い、11時過ぎですが昼食のおにぎりと
みかんを1個、お茶を少々、先ほどの東屋から20分も歩いていません。

予定では太龍寺の後12キロほど歩いて22番平等寺までですので
5時前にはゆっくり到着できます、が、太龍寺の上りで大苦戦。
少し歩いただけで汗の量がひどく多いのに気づきました、
お接待のみかんをもう一つ、これで水分は水筒だけになりました。

この日は四万十市で40度を超えた日で徳島でも38度でした。
どうも足取りが・・・・。
ここで悪夢がよみがえりました、最初に焼山寺に上った時、
13キロを8時間30分かかったことです、あの時も発汗量が多く
熱中症の一歩手前で、昼間なのに夕暮れのように薄暗い
感じでした、今回はそこまで入ってませんが、二歩くらい手前。

あと1キロくらいの所だったでしょうか、どうにも歩けません、
気分が悪くなりましたので、階段に座り荷物もおろし、靴も脱いで
放心状態です、時間を気にせず休むことに決めて息を整えますが
荒い息が収まりません、水筒のお茶も残りわずかです、
幸いなことは蚊がいないことです、蚊がいると休憩になりませんが、
いないのでゆっくり休めます。

後ろからは誰も来ません、山中にただ一人、死ぬ時はこんなもんか、
漠然としか考える力がなく、それでかえって救われる思いです。
携帯がつながるのかも確認することを忘れ、30分は休んだでしょう、
少し息も整ったので思い切って水筒のお茶を飲み干しました。
これで水分はなくなりました、着ているものは汗でびっしょりです。
そのせいで夏場だというのに冷えて寒い、明らかに異変が起きています。

それでも上らなくては、その気持ちだけで靴を履き荷物を背負い
上りだしますが10歩歩くのが精いっぱい、10歩で休憩、10歩で休憩。
休憩しているときに、ボーとした頭が何かを思い出しました。
ウエストバッグをゴソゴソ・・・・・。
ありました、鶴林寺でいただいたお接待の飴とチョコレート、
おにぎりを食べるほど気分はよくなっていませんが、飴なら
大丈夫、早速口に入れると甘さが一杯に広がります。
命拾いとはこういうことでしょう、1時間以上予定より遅れて
太龍寺の納経所の前に到着、すぐに自販機で水分補給、
飲んだしりから汗が落ちます、水筒にもお茶を補給し、スポーツドリンクを
もう1本、ここでも30分くらい固まっていました。

先に納経を済ませました、ここの天井には竜の絵が描かれていますが
それも見るのを忘れていました、明らかに集中力・注意力がなくなっています。
ここは予定変更、歩いて平等寺まではあきらめます。
お寺の隣に「山茶花」という民宿があり予約を入れようか迷っているうちに
体調が悪くなったので、ある意味助かりました。
この時間からキャンセルだと迷惑がかかりますから。

先に納経を済ませたのは、歩きならここに戻ってきますがロープウェイなら
お参りが済むとここには帰りません、予定変更はロープウェイとタクシーで
平等寺へということです。

読経も声がかすれています、足取りも重くロープウェイの乗り場へ行き、
タクシー会社の電話番号を尋ねると、そこからタクシーを頼んでくれました。
小さな親切が身に沁みます、ロープウェイはこれで3回目です、66番雲辺寺にも
ロープウェイはありますし、別格の箸蔵寺にもあります。
下に降りるとタクシーが待っていてくれました、平等寺まで楽をして
体も楽になりました、平等寺も無事にお参りが済みました。

体も戻り、新野駅まで歩き電車移動で23番薬王寺を目指します。
新野駅でも時間待ちです、その間に今夜の宿を探します。
薬王寺は日和佐にありますが、もう少し遠くまで電車移動と決め、
海部の「みなみ旅館」に電話を入れると泊れるということで一安心。

薬王寺は厄除けのお寺ということで男坂、女坂と名付けられた
階段を上って行きます、階段の両端には1円玉がいくつも置かれて
お参りの人の多いことがわかります。
お参りを済ませて日和佐駅に行くと40分ほど時間があります。
駅の横にある無料の足湯でのんびり、片手にはなぜかビールが・・・・・。

みなみ旅館は駅から5分余り想像していた通りの民宿で
料金もリーズナブル、ここから室戸岬までは1泊二日の行程です。
先を急ぐ遍路ではありませんが、暑さで今日のように体調を
崩してもいけないので始発で甲浦(かんのうら)まで行き、バスで
室戸の近くまで行って少し歩いて24番最御崎寺(ほつみさきじ)に
行くことにしました。