共感した言葉⑤
安岡正篤さんの一番弟子だと自他ともに認めた
伊藤肇さんの言葉を紹介します。
城山三郎さん、曽野綾子さん、中野孝治さんと並んで
私が最も好きな作家です。
たとえ、そいつが悪党とわかっていても、魅力があればどこまでも
ついていくし、反対に善人でどんな立派なことをいっても、
魅力がなければ、論理とか、イデオロギーだけではついていかない。
それが人間である。
だから、友を選ぶ場合には、何よりも気質、性格が合うことを
第一として、主義主張が合う、合わないは第二にすべきであろう。
主義とか、主張だとかは、それを信じている時には、きわめて
強いもののように思われるが、一朝にして変わってしまう
危険性もあるのだ。
したがって、主義主張で友人になると、それが一変したら最後、
仇敵になってしまう。
ところが気質とか性格とかは大体、一生変わらない。
ということは、生涯の交わりを結ぶためには、気質、性格を
互いに気に入り、認め合えるようなものでなくてはならない。
つまり、互いの人格の中で共鳴し、魅力を感じあい、
結合したものが永遠の友である。
「運命は偶然よりも必然である。『運命は性格のなかにある』と
いう言葉はなおざりに生まれたものではない」と芥川龍之介がいい、
「何事かを成し遂げるのは、その人の才能ではなくて性格である」
と司馬遼太郎も指摘しているのは、その辺の事情である。
重ねて言う。
人間の面白味はどこにあるか。
それは性格である。
性格によって言葉つきも違えば、考え方も違う。
言い換えれば、性格がその人の運命である。
そして、人間に興味をもつということはその人の性格に
興味をもつということである。