思い出し遍路⑭

いとう茂

2020年07月23日 15:29


新米の歩き遍路は2度目の徳島で12番札所の
焼山寺を目指しています。
この後、遍路ころがしと言われる20番の鶴林寺、21番の
太龍寺をはじめいくつもの難所も控えていますが、
結論から言えば、この焼山寺に勝る遍路ころがしはないと
断言できます。

前の日も大雨で湿気が高く足場もぬかるんで、基本は上り
ぬかるんでいなくても足場は安定しているとは言えません。
10歩歩いて深呼吸、そのたびに金剛杖を支えにして休憩、
人と言う字は人と人が支えあうのではなく、人が杖に
支えられているところからきている・・・・。
そう説明される方が納得できる状態です。

この時に履いていた靴は前回の反省もあって、足首をサポートする
トレッキングシューズでしたが、これも上りには負担になりました。
個人差はあるでしょうが、少なくとも足首はねんざの心配もありますが、
足首までカバーするものは必要ないように思いました。
重量もそこそこあり、重い足取りが余計重くなりました。
水分も確保していたはずですが・・・・足りない・・・・・。
一度に大量の水分摂取は避けていましたが、それでもすぐに1本が
なくなってしまいます。
レインコートが安価なもので熱気がレインコートの内側にこもり、よけいに
体温が上昇したのもまずかったと思います。
熱中症と隣り合わせで山を上っている、そんな感覚でした。

浄蓮庵は建物はありません、降る雨に打たれながらリュックを下ろして
休憩ですが、こうしたことは遍路で山に入れば覚悟が必要です。
水分切れとスタミナ切れ、それでも戻れません、前にしか進めない
なんでこんなアホなことやってるんだろう・・・・・。
浄蓮庵は700mほどのあたりにあり、ここからは400m付近まで
一気に下り、また振出しに戻って新しい山に上ることになります。
下りきったところには民家がポツポツ、その軒下を通って新しい山の
中に分け入っていきますが、この辺りですでに思考回路が麻痺して
何も考える力がなかったように思います。
わずか13キロほどの距離ですが、これほど長く感じられたことはなく、
下りきってから残りは3キロ足らずですが、その間に300mほど上る
最後の難関で、もうこんな苦しい思いはしたくない、そんな時間は
まだまだ続きます。