逃げない③

いとう茂

2021年08月06日 15:45


秋の新人戦が終わると次は春の滋賀県大会、
秋は1種目1名ですが、春は1種目に同じ高校で3名までエントリーできます。
メンバーは秋の新人戦の顔触れに加えて、秋に出場できなかった選手と
新しく高校に入った1年生で、秋とは選手の数が違います。
秋に5位に入賞たことで周囲の期待もありましたし、自分でも
6位以内なら近畿大会に出場できると、春までの冬季練習にも
力が入って、秋より一回りも二回りも成長した実感があり、6位以内も
現実のものと考えていました。

もう50年も前のことなのに、振り返ると当時のことが思い出されて
なかなか前に進みません。
春の大会は気持ちが入りすぎたのか・・・・・記録なし。
この先、夏の大会、近畿ジュニア、秋の大会とありましたが、すべて
3位でした、すっかり3位が定位置になり上の二人とは同学年、
勝てない人間がいることが励みになることもあれば、気持ちが
萎えることもあります。
中学校で逃げ場に使った棒高跳びが、自分の居場所になっている
上にいる二人に勝つには新しい硬いポールで握りを高くして
反発力を得るしかない。
3人で一番柔らかいポールで握りも一番低いのですから、技術だけでは
限界があります。
硬いポールを使いこなすには走力と筋力の強化しかありません。
秋の大会後の冬季練習はその二つに重点的に取り組み、逃げることなく
自分を追い込みました。

練習後の着替えでカッターのボタンがはまらない、家に帰っても箸が
握れない、腕がパンパンで握る感覚が出ない・・・・そんな日常でした。
そして迎えた春の大会、多くの選手がバーを越えられずに脱落、
残ったのは3人、そして最初に脱落したのは・・・・・私でした。
秋から30センチ記録を伸ばしましたが、他の2人も記録を伸ばし、
縮まってはいましたが届かない現実がありました。
この時は落ち込むことはありませんでした、新しい硬いポールが使い
こなせずに、今まで使っていた柔らかく短いポールでしたので、
次の近畿大会で新しいポールが使いこなせれば、近畿で6位以内に
入りインターハイも可能だと手ごたえがありました。

近畿大会までは2か月ほど、時間的には間に合う計算でしたが、
硬いポールが立たず、練習中に落下・・・・・左の足首がブランブラン
強度のねん挫で万事休す。
そんな状態での近畿大会、インターハイは絵に描いた餅になりました。
ここで陸上をやめよう、まだ最後の夏はあるけど出られても新しいポールは
使えず、またまた3位が目に見えていました。

またまた時間が来ました、次回に最終報告です。