イソップ物語から⑦
「肉をくわえた犬」
肉をくわえた犬が、川のそばにやってきました。
すると、自分の影が水にうつりました。
バカな犬は、それが自分の影だと気付かず、
(おや、わしより大きい肉をくわえている犬がいるぞ)
と、思いました。
犬はそいつが、うらやましくなりました。
(よし、あいつの肉もとってやろう)
犬は川にうつっている犬をにらみつけ、ううっと、うなりました。
相手の犬も負けずに、にらみ返しました。
(生意気な奴だ!)
犬は、ワンとほえました。その途端、肉は川に落ち、
すぐ流れていってしまいました。
それを見て、犬は悔しがりました。
(しまった、肉を二切れも無くしてしまった)
と、言うのも、肉はもともと一切れしかなかったのに、
バカな犬は、水にうつった犬の肉まで
自分のものと思い込んでいたのですから。
自分のものは自分のもの、人のものも自分のもの。
隣の芝生は青く見える。
二兎を追うものは一兎も得ず。
自分が今、持っているものは何か、
一度確認してみることも必要でしょう。
もしかすると、人がうらやむものを粗末にしている
こともあるかもしれませんし、どうでもいいものを大切に
していることもあるでしょう。
過去に、大切なものを失った気付きもあるやもしれません。
文中で強調されている「バカな犬」は、
私には心に刺さりました。