生活保護に思う

いとう茂

2013年01月27日 12:41

自民党政権に変わり生活保護費の引き下げが検討されていますが、
ここにきて、ニュースでは引き上げの検討も示唆されています。
これはデフレからインフレへと景気対策がうまくいった時の措置ですが、
基本的には下げる方向での検討ではないかと思います。

低所得者の収入より生活保護費の方が多いためとされています。
額に汗して働く者より働かずにいる者の方がたくさん国から
お金をもらうのはよくない。
そんな発想だと思います。

不正受給が発覚する中、理屈は分からなくもありませんが、
引き下げの議論の中で、生活保護費で生活する人たちは、
どういう暮らしを続けているのかそのあたりの議論が見えてきません。
生活保護は、最低限の文化的な暮らしができる費用と位置づけされています。

生活保護費でぜいたくな暮らしをしているのなら引き下げも理解できますが・・・・・。
それに、現在生活保護費並みの低所得の子育て世帯が受けている
就学補助金や低所得世帯で免除になっている市民税の議論も見えません。

生活保護費の引き下げで低所得世帯の就学補助金が打ち切りになったり、
新たに市民税の課税対象になる世帯が確実に出てきます。
そうなると子育て世帯では、例えば修学旅行の積立金の支出に
加えて市民税の課税と支出が大幅に増えることも予想されます。

低所得世帯は生活保護費が上がろうが下がろうが
自分たちの懐に入るお金に変化がありません。
それよりも、最低賃金を上げて、額に汗する人の手元に
生活保護費以上のお金が渡るようにすべきではないでしょうか。

そう言うと企業の経営や競争力に影響が出る。
そんな答えが返ってきます。

そのことも一定理解します。
企業あっての賃金。
正規採用より非正規採用の方が人件費や福利厚生面でも
支出が少ないのが当然で、大津市でも臨時職員・嘱託職員が
多くいます。
議会の答弁ではひとり親世帯の就労形態で非正規雇用から正規雇用に
転換できるように努力します的な答弁なのに・・・・・。

それでもいいから就職するという選択肢ではなく、
それしかないから就職するという選択肢の方もいるでしょう。

年功序列、終身雇用より実力主義の台頭が今の日本を
作ったとすれば、ある面では国民の選択でもあります。

大津市の生活保護の実態は平成20年度までは大津市全世帯の8%台で推移し、
21年度は10,07%、22年度11,18%、23年度11,27%と増加し
被保護世帯は20年度2,101,21年度2,377、22年度2,647,23年度2,706
と右肩上がりになっています。
高齢者、障害・傷病、母子とその他の世帯は平成19年度と
23年度を比較すると高齢者世帯822が1,028、障害・傷病764が1,077
母子199が258ですが、その他は175が330に増加しています。

このその他はいわゆるニートやひきこもりと呼ばれる人が大半で、
労働すべき人とも言えます。
今年度大津市では子ども若者プランの中で、こうした
ニートやひきこもりの就労支援を積極的に行うことを盛り込んでいます。
しかし、どこにいるかほとんど実態が不明なニートや引きこもり、
詰まる所、本人たちが働こうという気にならないと、せっかくのプランも
絵に描いた餅でしかありません。

甘えるな!と
頭ごなしに怒鳴りつける気はありませんが、一度しかない人生。
自分だけの誰にも代われない人生。
やり直す時に早い遅いはない。

棺桶の蓋が閉まるときに後悔しない生き方をしてほしい。
ただ、そのことを願うだけです。

啐啄という言葉があります。
啐とは卵の中にいる雛が殻を破ろうと中から殻をできたばかりのくちばしで
叩く様で、外に出る卒業に似ています。
啄は石川啄木、啄木鳥の啄で、外から親鳥が殻を突き少しだけ殻を割って
雛を殻から出そうとする様です。
親鳥は大きな穴をあけないと言います。
最終は雛の生命力しかありません。

そして、お互いが殻を破ろうとする時がずれると、雛は
死んでしまとも言われます、まさに阿吽の呼吸が必要です。
同様に行政がどれだけ道筋をつけても最後は本人次第です。
時間も、費用も、施策もすべて限界があります。
恐る恐るでも一歩を踏み出す若年世代の受給者に期待します。

都市部ではニート・ひきこもりも多く生活保護費全体を押し上げているのも事実です。
生活保護費の引き下げの前にこうしたニート・ひきこもりの就労を考えるべきだと思います。

貰い過ぎ。
そうした世論があるのは確かですが、多くの善良な生活保護受給者が
どんな暮らしぶりか知ることは同じ国の住民として必要だと思います。
特に、高齢者、母子、障害・傷病。



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