2024年03月09日

「原爆の図」より③

丸木位里さんと丸木俊さんの「原爆の図」の続きです。

火 第二部
青白く強い光。爆発、圧迫感、熱風―天にも地にも人類がいまだかって味割ったことのない衝撃。次の瞬間に火がついた。
めらめらと燃えあがり、広漠たる廃墟の静寂を破って、ごうごうと燃えていったのでありました。
うつぶせて家の下敷きになったまま失心した人、気がついて脱け出ようとして、紅蓮の炎につつまれていった人。
ガラスの破片がざっくりと腹につきささり、腕がとび、足がころがり、人々は倒れ、焼け死んでいきました。
倒れた柱の下敷きになり、子どもを抱いたまま、母親は逃れ出ようとあせりました。
「早く早く」
「もうだめです」
「子どもだけでも」
「いいえ、あなたこそ逃げてください。わたしはこの子と死にます。路頭にまよわすだけですから」
「母と子は助け出そうとする人の手をふりきって、炎にのまれていきました。
  
Posted by いとう茂 at 09:56Comments(0)