2014年05月03日
日本の昔話より
昨年の暮れにタイトルにつられて久しぶりに文庫本を買ってしまいました。
買ってから・・・・やはり後悔しました、字が小さい。
それでも何日かに数ページずつ読み進んでいて「近江の国の三井寺」
というくだりがありました、滋賀か大津の昔話と思ったら、
福島県平市の「磐城昔話集」とあり驚きました。
母が子を思う気持ちが伝わってきます。
「蛇の玉」
むかし近江の国の三井寺に、毎日おまいりにきて
必ず茶店で休んでいく、若い美しい女の人がおりました。
それを見た近所の酒屋の息子が、お嫁さんにしたいと思って、
話をしてくれるようにお茶屋のお婆さんに頼みました。
ある日いつものようにお参りに来た女の人にお婆さんがその話をすると、
その女の人は、私はある願い事があってこのお寺に百日の間
お参りするのですが、それがすんだ後でいいならお嫁に行きましょうと
言う答えでした。
息子も異存のあろうはずはなく話はどんどん運んで
嫁入りの日取りも決まりました。
さていよいよ、その日その時刻になると、今までいいお天気だったのが
急に雨が降り出しましたが、それもやがてやんで女は嫁入り道具を
持ってやってきました。
それからというもの、酒屋は急に繁盛するようになりました。
間もなく女は身重になったので、息子の母親に頼んで
倉を一つ借りてそこに寝起きをするようになりましたが、
お産が近づくと、私のお産の間は決して倉を覗いて
みないで下さいと返す返す頼みました。
けれどもお嫁さんがお産で苦しんでいると思うと
息子はとても心配でじっとしていられません。
つい約束を破って倉の中を覗いてみて驚きました。
中には倉いっぱいになるような大蛇が横たわって、子どもを抱くように中に置いて
舌でなめているではありませんか。
息も止まってしまうほどびっくりしてしまいました。
こういう姿を見られたことに心づいた蛇は、もとの人間の姿になって
倉から出てきましたが、こうなったらからにはもう私はここにいられません、
暇をいただきたいというのです。
そうして、私がいなくなったら子供のお乳が無くてさぞ困るでしょう。
私の目の玉を一つくり抜いておいて行くから、
これをしゃぶらせて育ててください。
とこういい置いてどこともなく知れず行ってしまいました。
その後子どもには目の玉をしゃぶらせておくとお腹を空かせる
こともなく育っていきましたが、ある時殿様がこの不思議な目の玉の話を聞いて、
自分の子どもを育てるために取り上げてしまいました。
酒屋は、子どもが泣くので途方に暮れていましたが、
家を出ていく時に女の言った言葉を思い出して、
湖のほとりに行ってよぶと水の中から女が現れました。
そこで玉を取り上げて困っている事情を話すと、
それではと言って残った一つの目の玉をくり抜いて渡しました。
そしていうには、これで私は両眼とも失ってしまったから、
もう世の中を見ることができません。
成長する子どもを見る楽しみも失われてしまいました。
この子が大きくなったら、どうか三井寺の鐘つきにしてください、
私はそれで朝夕を知って暮らしていくことができましょうから、
と言って、再び水の中に姿を消してしまいました。
子どもはその玉で無事に成長しましたので、
母の言葉通り三井寺の鐘つきになったということであります。
女は弱し、されど母は強し、ということでしょう。
買ってから・・・・やはり後悔しました、字が小さい。
それでも何日かに数ページずつ読み進んでいて「近江の国の三井寺」
というくだりがありました、滋賀か大津の昔話と思ったら、
福島県平市の「磐城昔話集」とあり驚きました。
母が子を思う気持ちが伝わってきます。
「蛇の玉」
むかし近江の国の三井寺に、毎日おまいりにきて
必ず茶店で休んでいく、若い美しい女の人がおりました。
それを見た近所の酒屋の息子が、お嫁さんにしたいと思って、
話をしてくれるようにお茶屋のお婆さんに頼みました。
ある日いつものようにお参りに来た女の人にお婆さんがその話をすると、
その女の人は、私はある願い事があってこのお寺に百日の間
お参りするのですが、それがすんだ後でいいならお嫁に行きましょうと
言う答えでした。
息子も異存のあろうはずはなく話はどんどん運んで
嫁入りの日取りも決まりました。
さていよいよ、その日その時刻になると、今までいいお天気だったのが
急に雨が降り出しましたが、それもやがてやんで女は嫁入り道具を
持ってやってきました。
それからというもの、酒屋は急に繁盛するようになりました。
間もなく女は身重になったので、息子の母親に頼んで
倉を一つ借りてそこに寝起きをするようになりましたが、
お産が近づくと、私のお産の間は決して倉を覗いて
みないで下さいと返す返す頼みました。
けれどもお嫁さんがお産で苦しんでいると思うと
息子はとても心配でじっとしていられません。
つい約束を破って倉の中を覗いてみて驚きました。
中には倉いっぱいになるような大蛇が横たわって、子どもを抱くように中に置いて
舌でなめているではありませんか。
息も止まってしまうほどびっくりしてしまいました。
こういう姿を見られたことに心づいた蛇は、もとの人間の姿になって
倉から出てきましたが、こうなったらからにはもう私はここにいられません、
暇をいただきたいというのです。
そうして、私がいなくなったら子供のお乳が無くてさぞ困るでしょう。
私の目の玉を一つくり抜いておいて行くから、
これをしゃぶらせて育ててください。
とこういい置いてどこともなく知れず行ってしまいました。
その後子どもには目の玉をしゃぶらせておくとお腹を空かせる
こともなく育っていきましたが、ある時殿様がこの不思議な目の玉の話を聞いて、
自分の子どもを育てるために取り上げてしまいました。
酒屋は、子どもが泣くので途方に暮れていましたが、
家を出ていく時に女の言った言葉を思い出して、
湖のほとりに行ってよぶと水の中から女が現れました。
そこで玉を取り上げて困っている事情を話すと、
それではと言って残った一つの目の玉をくり抜いて渡しました。
そしていうには、これで私は両眼とも失ってしまったから、
もう世の中を見ることができません。
成長する子どもを見る楽しみも失われてしまいました。
この子が大きくなったら、どうか三井寺の鐘つきにしてください、
私はそれで朝夕を知って暮らしていくことができましょうから、
と言って、再び水の中に姿を消してしまいました。
子どもはその玉で無事に成長しましたので、
母の言葉通り三井寺の鐘つきになったということであります。
女は弱し、されど母は強し、ということでしょう。
Posted by いとう茂 at 14:44│Comments(0)