2022年10月05日

新・昔、昔あるところに③

因果応報・自業自得編

昔、昔あるところに、大店にやとわれて馬車の車夫をしている男がいました。
馬車は4頭立てで大店に買い物に来るお客様の送迎に使われていました。
馬車には10人ほど乗れますが、いつも半分程度の人しか乗っていません。
狭い道もあり2頭立ての馬車でも十分に、
送迎はできますが大店の威信を示すためか、ずっと4頭の馬を使っています。
4頭立てで後ろに人が乗る車がついているので、かなりの長さになります。
そのためかどうか分かりませんが、
車夫は傲慢な人間で土ぼこりを上げて馬車を走らせ、
路地から荷車が出ようとするとにらみつけて威嚇します。
近所の人はその様子を見ていますので「お互い様やのになぁ、
なんであんなに偉そうなんやろ」と話し、この大店では買い物をしなくなりました。
天下の公道は利用する人みんなのもので、馬車だけのものではありません。
そのために遠方のお客様の送迎で、車夫はますます忙しくなりました。
馬車もさらに早く走るために、舞い上がる土ぼこりも多く、近所の人にとっては大迷惑でした。
車夫は馬の手入れも馬車の手入れもしないので、
どちらも汚れてしまい乗る人も座る前に椅子のほこりを払ってからでないと、
着物が汚れてしまいます。
「車夫さんよ、たまには掃除くらいしといておくれよ」お客様がそう言っても知らん顔です。
まるで、いやなら乗らずに歩いて返れ、そう言っているように見えます。
そんなある日、馬車が轍にはまってしまい、車輪が大きな音を立てて折れてしまいました。
幸い大きな怪我はなかったのですが、車輪が折れては馬車は走りません。
車夫は轍を憎らしそうににらみながら、車輪を外して修理に持って行きました。
「すぐに直してくれ、これじゃ仕事にならん」ここでも偉そうな口をきいています。
「こんな大きな車輪を直すのには10日はかかるよ、それに、
馬車はもっとゆっくり走らせるものだよ、あんなに早く走ったら折れるのは当り前さ」
「それじゃ仕事にならん、明日までに直せ」
「いくら言われても無理なものは無理だ、
10日が嫌なら他をあたってくれ」とにべもなく断られました。
近所の人は因果応報だよとか、ざまぁ見ろ自業自得だと陰で大笑いをしました。
知人から聞いたマイクロバスの運転手の話を参考にしました。
運転手も営業マンです、そのことは肝に銘じておくべきだと思います。

Posted by いとう茂 at 22:07│Comments(0)
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