2016年11月10日

滋賀県中学生広場「私の思い2016」②

今回紹介するのは能登川中学校2年生の
女子生徒の作品です。
家族の中で会話の時間が減り親子断絶などという言葉が
流行ったのはずいぶん昔のことです。
今はスマホや携帯でメールやラインという、細切れの
言葉のやり取りが主流かもしれません。
そんな中で、命について家族が本音をぶつけて話し合う
家庭があることを知り、ホンワカした気分になりました。
大切なお母さんの全快を祈っています。

「母の意思と私の思い」
私の母は、2年ほど前、体調をくずし、病院へ通っていました。
母の症状は重かったため、手術をすることになりました。
そんな中母は、私と父に対して一枚のカードを見せたのです。
それは「臓器提供意思表示カード」というものでした。
このカードは、自分が死んだ際、健康な臓器の提供を
待っている人に臓器をあげる意思を示すものです。
母のカードには、死んだ後、全ての臓器を提供するということが
書かれていました。
もちろん、私も父も反対しました。
最後くらい今までの自然な姿でいてほしかったからです。

しかし、幼いころから病気がちだった母の思い、それは、
不自由にしている人のために少しでも役に立ちたい。
また、多くのドナー待ちがある中で自分ができることは、
このことしかないというものでした。
その思いを聞き、私の思いも大きく変化しました。
今までは自己中心的な考えでしたが、母の思いを聞き、
周りのことも考えられるようになれました。
これは後に、私の将来の夢にも大きく影響をあたえました。

家庭内での結論が出ないまま、母の手術日となりました。
その日は登校日だったので、家へ帰ってから母に会いに
行きました。
その時、ちょうど母のところに看護師さんが来ました。
看護師さんは母に「痛いところはありませんか」と笑顔で
声をかけていました。
その様子を見て、私は母に「とても患者さん想いだね」と
言うと、母は「看護師という仕事は患者さんの命に関わる
仕事だからね」と返しました。
この会話が私の思いを決定づける瞬間となったのです。

それまでの夢は薬剤師になることでした。
しかし、この時に患者さんに直接寄りそう姿を見て看護師に
なりたいと思ったのです。
それと共に、私は母の臓器提供の意思を受け入れました。
そして私も、将来は困っている人の役に立つために、
この「臓器提供意思表示カード」を持ち、死後は臓器を提供
したいと思いました。

しかしその頃、父はなお頑固に反対していました。
その理由は、誰のもとへ母の臓器が行くかわからないからだ
そうです。
また、移植をしても、その臓器が患者さんに合わなければ
捨ててしまわれる場合もあるそうです。
それを聞いた父は、「使われるかも分からないのに体を傷つけて
まで移植をしてほしくない」と思ったそうです。

そんな中、私は臓器提供の現状について気になったので
詳しく調べてみました。
すると、日本には臓器提供を待っている人が1万3千人ほど
いることが分かりました。
それに対して、1年間で移植を受けられる人は約2百人しか
いません。
この数は海外よりはるかに少なく、移植を待ちながら死んでいく
人が多いのです。

私は、この臓器提供の現状を深刻でならないと思います。
もちろん、自分の臓器を人にあげるということは、抵抗が
あると思います。
他の人を思い、臓器提供をする勇気こそが、この現状を
改善する一歩になると、私は思います。
さらに、先ほど述べたように生きたくても生きられない人の存在を
知り、命を大切にしなければならないと思います。
そうすれば、世の中から、殺人事件や自殺といった事件も
減っていくのではないでしょうか。

「臓器提供意思表示カード」は、私達家族にとって「命」に
ついて考えさせられるきっかけとなりました。
私の家族三人の中でも結論が出ない、難しい問題です。
しかし、私のように、反対から賛成に考えが変わったり、
将来に影響を受けるような人が他にもいると私は思います。
みなさんも自分の「命」について深く考えてみてください。

Posted by いとう茂 at 12:22│Comments(0)
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