2016年12月12日
みにくいアヒルの子
皆さんもご存じの「みにくいアヒルの子」の話ですが、
話の中ではアヒルが逃げるという表現を使っています。
世の中逃げる場所や逃げ込む人がいるのは幸せなことで、
多くの人が身動きできずに耐える、闘う、泣き寝入り、そんな
日々を送っている人も多くいると思います。
日本人の気質として逃げるのは恥ずかしいこと、悪いことといった
感覚があるように思います。
一所懸命、そんな言葉もありますが、この話を改めて読んでいて、
逃げてもいいんだ、休んでもいいんだという気持ちにさせられました。
「みにくいアヒルの子」
むかしむかし、あるところに、おほりに囲まれた古いお屋敷がありました。
そのおほりのしげみの中で、一羽のアヒルのお母さんが巣の
中のタマゴをあたためていました。
やがてタマゴが一つずつ割れると、中からは黄色い色をした
かわいいひなたちが顔を出します。
ですが、巣の中で一番大きなタマゴだけが、なかなか生まれてきません。
しばらくたって、やっとタマゴを割って出てきたのは、たいそう
体の大きなみにくいひなでした。
みにくいアヒルの子はどこへ行ってもいじめられ、つつかれて、
かげ口をたたかれます。
はじめのうちはみにくいアヒルの子をかばっていたお母さんも、しまいには、
「本当にみにくい子。いっそ、どこか遠い所へ行ってくれたらねえ」
と、ため息をつくようになりました。
それを聞いたみにくいアヒルの子はいたたまれなくなって、
みんなの前から逃げ出してしまいました。
あてもなく飛び出しましたが、どこに行ってもきらわれます。
アヒルの子は人目につかない場所を選んで眠り、起きればまた逃げ続けました。
季節はいつの間にか、秋になりました。
そんなある日、みにくいアヒルの子はこれまで見たこともないような、
美しいものを目にしました。
それは、白鳥のむれでした。
長くしなやかな首をのばし、まぶしいばかりの白いつばさをはばたいて、
白鳥たちはあたたかい国へと飛んでいくところでした。
アヒルの子はあっけにとられて、その美しい烏たちが空のかなたへ
去っていくのを見送っていました。
「あんな鳥になれたら、どんなにか幸せだろう。
いや、アヒルの仲間にさえ入れないくせに、そんな事を考えてどうするんだ」
冬が来て、沼には氷が張りはじめました。
アヒルの子はアシのしげみにじっとうずくまって、きびしい寒さをたえしのびました。
そのうちに、お日さまはしだいにあたたかさをまし、ヒバリが美しい声で
歌いはじめます。
ついに、春が来たのです。
アヒルの子は体がうきうきしはじめると、つばさをはばたいてみました。
すると体が、浮くではありませんか。
「ああ、飛んだ、ぼくは飛べるようになったんだ」
アヒルは夢中ではばたくと、やがておほりにまいおりました。
その時、おほりにいた白鳥たちが、いっせいに近づいてきたのです。
「ああ、みにくいぼくを、殺しにきたんだ。
ぼくは殺されるんだ。
・・・でも、かまわない。
みんなからひどい目にあうより、あの美しい鳥に殺された方が、
いくらましだかしれない。 さあ、ぼくを殺して!」
アヒルの子は、殺されるかくごをきめました。
しかし、そうではありません。
白鳥たちはアヒルの子の周りに集まると、やさしく口ばしでなでてくれたのです。
そして白鳥の1羽が、言いました。
「はじめまして、かわいい新人さん」
「えっ? 新人さん? かわいい? ぼくが?」
ビックリしたアヒルの子は、ふと水の上に目を落とすと、
そこにうつっていたのは、もうみにくいアヒルの子ではありません。
まっ白に光りかがやく、あの白鳥だったのです。
冬の間に羽が抜けかわって、美しい白鳥に姿をかえていたのでした。
「あたらしい白鳥が、一番きれいだね」
みんなの声が、聞こえてきました。
話の中ではアヒルが逃げるという表現を使っています。
世の中逃げる場所や逃げ込む人がいるのは幸せなことで、
多くの人が身動きできずに耐える、闘う、泣き寝入り、そんな
日々を送っている人も多くいると思います。
日本人の気質として逃げるのは恥ずかしいこと、悪いことといった
感覚があるように思います。
一所懸命、そんな言葉もありますが、この話を改めて読んでいて、
逃げてもいいんだ、休んでもいいんだという気持ちにさせられました。
「みにくいアヒルの子」
むかしむかし、あるところに、おほりに囲まれた古いお屋敷がありました。
そのおほりのしげみの中で、一羽のアヒルのお母さんが巣の
中のタマゴをあたためていました。
やがてタマゴが一つずつ割れると、中からは黄色い色をした
かわいいひなたちが顔を出します。
ですが、巣の中で一番大きなタマゴだけが、なかなか生まれてきません。
しばらくたって、やっとタマゴを割って出てきたのは、たいそう
体の大きなみにくいひなでした。
みにくいアヒルの子はどこへ行ってもいじめられ、つつかれて、
かげ口をたたかれます。
はじめのうちはみにくいアヒルの子をかばっていたお母さんも、しまいには、
「本当にみにくい子。いっそ、どこか遠い所へ行ってくれたらねえ」
と、ため息をつくようになりました。
それを聞いたみにくいアヒルの子はいたたまれなくなって、
みんなの前から逃げ出してしまいました。
あてもなく飛び出しましたが、どこに行ってもきらわれます。
アヒルの子は人目につかない場所を選んで眠り、起きればまた逃げ続けました。
季節はいつの間にか、秋になりました。
そんなある日、みにくいアヒルの子はこれまで見たこともないような、
美しいものを目にしました。
それは、白鳥のむれでした。
長くしなやかな首をのばし、まぶしいばかりの白いつばさをはばたいて、
白鳥たちはあたたかい国へと飛んでいくところでした。
アヒルの子はあっけにとられて、その美しい烏たちが空のかなたへ
去っていくのを見送っていました。
「あんな鳥になれたら、どんなにか幸せだろう。
いや、アヒルの仲間にさえ入れないくせに、そんな事を考えてどうするんだ」
冬が来て、沼には氷が張りはじめました。
アヒルの子はアシのしげみにじっとうずくまって、きびしい寒さをたえしのびました。
そのうちに、お日さまはしだいにあたたかさをまし、ヒバリが美しい声で
歌いはじめます。
ついに、春が来たのです。
アヒルの子は体がうきうきしはじめると、つばさをはばたいてみました。
すると体が、浮くではありませんか。
「ああ、飛んだ、ぼくは飛べるようになったんだ」
アヒルは夢中ではばたくと、やがておほりにまいおりました。
その時、おほりにいた白鳥たちが、いっせいに近づいてきたのです。
「ああ、みにくいぼくを、殺しにきたんだ。
ぼくは殺されるんだ。
・・・でも、かまわない。
みんなからひどい目にあうより、あの美しい鳥に殺された方が、
いくらましだかしれない。 さあ、ぼくを殺して!」
アヒルの子は、殺されるかくごをきめました。
しかし、そうではありません。
白鳥たちはアヒルの子の周りに集まると、やさしく口ばしでなでてくれたのです。
そして白鳥の1羽が、言いました。
「はじめまして、かわいい新人さん」
「えっ? 新人さん? かわいい? ぼくが?」
ビックリしたアヒルの子は、ふと水の上に目を落とすと、
そこにうつっていたのは、もうみにくいアヒルの子ではありません。
まっ白に光りかがやく、あの白鳥だったのです。
冬の間に羽が抜けかわって、美しい白鳥に姿をかえていたのでした。
「あたらしい白鳥が、一番きれいだね」
みんなの声が、聞こえてきました。
Posted by いとう茂 at 13:47│Comments(0)