2017年01月04日
どこで笑うか、何が面白いか⑤
お正月のテレビはお笑い番組が中心で、
かじりついて見ようとは思いませんでした。
とは言っても、ほとんど寝正月でテレビそのものを見ていません。
読書もほとんどせずに、ひたすら眠りこけていました。
テレビのお笑いは自虐的なものや罰ゲームのようなもので、
笑いをとる番組が多く、とても見る気にはなりませんでした。
芸人とは芸をする人の事ですが、時代とともに芸の定義も
変わるのかもしれません。
見ている方も笑えればいいという感覚かも知れません、
たとえが適切かどうかわかりませんが、お腹がいっぱいなのに
無理やり口に食べ物を突っ込まれている、あるいは、他に食べるものが
ないので仕方なく食べているといった感じがします。
話術でこちらを引き込んで笑わすという方法もありますし、
笑う方もほんのり、ほっこり心が和む、そんな笑いが少なくなりました。
江戸の小話は落語のネタになったり酒の席で披露されて
今の時代まで伝えられてきたのでしょう。
派手さや話題性には欠けるかもしれませんが、日常生活に根差した
笑いがあります。
そんな笑いを今年も届けることができればと思っています。
「目を覚ます」
あるところに、ひまさえあれば、いねむりばかりしている亭主がいました。
今日も店先でひなたぼっこをしながら、コックリ、コックリと、
気持ち良さそうにいねむりをしています。
「あれっ、またいねむりが始まったよ。ねえ、お前さん。
みっともないから中に入って、奥の部屋で休みなさいな」
女房が見かねて、店の中から声をかけました。
すると亭主が目をつぶったまま、手さぐりで家の中に入って行こうとしています。
女房が驚いて、
「お前さん! 目をちゃんと開けて歩きなされ。物に当たって
怪我をするではありませんか」
と、注意をすると、亭主は、
「しーっ! そんな大きな声を出すな! せっかく寝ているのに、
おれが目を覚ましてしまうではないか!」
と、寝言で答えたそうです。
「やっとわかった」
ある男が、こんな事を思いました。
「銭を拾うととうれしいと言うが、残念ながらおれは一度も銭を拾った事がない。
いっぺんで良いから、拾ってみたいものだ」
そして外へ出ると、目玉を皿の様に大きく見開いて町中を探しましたが、
やっぱり銭は落ちていません。
そこで男は、
「仕方ない。こうなったら自分で銭を落として、それを拾ってみるか」
と、一文銭を足元に投げて拾ってみましたが、全然うれしくはありません。
「うむ。今度はちと、遠くへ投げてみよう」
そう言って男は、一文銭を少し遠くに投げてみました。
すると一文銭はコロコロコロコロ転がって、運悪く、どぶの中に落ちてしまいました。
「しまった。大事な銭が!」
男はあわててどぶの中を探しましたが、一文銭はなかなか見つかりません。
そして日が暮れかけた頃、ようやく落とした一文銭が見つかったのです。
男はやっと探し出した一文銭をながめて、しみじみと言いました。
「やっと、わかった」
「ほらふき」
話の大げさな男が言いました。
「この前、山へ行ったら大きなイノシシが出てな、それがこっちに走ってくるんだ。
そこでおいらはあわてて、駆けてきたイノシシの角をがっちりと掴んだんだ。
角を掴むのがもう少し遅かったら、大変な事になっていたよ」
するとそれを聞いた友だちが、あきれ顔で言いました。
「バカな事を言うなよ。イノシシに角なんか、あるわけないだろうが」
「えっ? ああ、そうだった。実は角じゃなくて、羽を掴んだんだ」
「またまた、バカな事を言う。イノシシに羽なんか、どこにある」
「むむむ。それなら、どこを掴もうか?」
「字の読めぬ犬」
犬の大嫌いな男が、友だちに聞きました。
「なあ、犬がいても平気で通れる方法はないだろうか?」
「そいつは、簡単な事さ。
手の平にトラという字を書いておいて、犬がいたらそいつを見せるんだ。
すると犬は、おっかながって逃げるから」
「ふむふむ。そいつは、良い事を聞いた」
男はさっそく、手の平にトラという字を書いて出かけました。
しばらく行くと、向こうから大きな犬がやってきます。
(よし、さっそく試してやろう)
男は手の平を、犬の前に突き出しました。
すると犬は一瞬びっくりしたものの、
大きな口を開けてその手をガブリと噛んだんです。
次の日、手を噛まれた男が友だちに文句を言いました。
「やい、お前の言う様に、手にトラという字を書いて犬に見せたが、
ほれこの様に、食いつかれてしまったわ」
すると友だちは、こう言いました。
「やれやれ、それは不運な事だ。おそらくその犬は、字の読めぬ犬だろう」
「つらの皮」
若者たちが集まって、こんな話を始めました。
「世の中で一番かたい物とは、何だろう?」
一人が、言いました。
「そりゃあ、石だろう。あれよりかたい物はない」
すると、別の一人が言いました。、
「いいや、石は金づちで砕く事が出来るぞ」
「それじゃあ、一番かたいのは鉄だな」
「いいや、鉄は削ったり、刻む事が出来るぞ」
すると中の一人が、ひげづらの男を指差して言いました。
「おい、お前のひげが、一番かたいんじゃないのか?」
「何故だ?」
「そいつは、お前の鉄面皮と言われるつらの皮を突き破って、
生えているんだからな」
かじりついて見ようとは思いませんでした。
とは言っても、ほとんど寝正月でテレビそのものを見ていません。
読書もほとんどせずに、ひたすら眠りこけていました。
テレビのお笑いは自虐的なものや罰ゲームのようなもので、
笑いをとる番組が多く、とても見る気にはなりませんでした。
芸人とは芸をする人の事ですが、時代とともに芸の定義も
変わるのかもしれません。
見ている方も笑えればいいという感覚かも知れません、
たとえが適切かどうかわかりませんが、お腹がいっぱいなのに
無理やり口に食べ物を突っ込まれている、あるいは、他に食べるものが
ないので仕方なく食べているといった感じがします。
話術でこちらを引き込んで笑わすという方法もありますし、
笑う方もほんのり、ほっこり心が和む、そんな笑いが少なくなりました。
江戸の小話は落語のネタになったり酒の席で披露されて
今の時代まで伝えられてきたのでしょう。
派手さや話題性には欠けるかもしれませんが、日常生活に根差した
笑いがあります。
そんな笑いを今年も届けることができればと思っています。
「目を覚ます」
あるところに、ひまさえあれば、いねむりばかりしている亭主がいました。
今日も店先でひなたぼっこをしながら、コックリ、コックリと、
気持ち良さそうにいねむりをしています。
「あれっ、またいねむりが始まったよ。ねえ、お前さん。
みっともないから中に入って、奥の部屋で休みなさいな」
女房が見かねて、店の中から声をかけました。
すると亭主が目をつぶったまま、手さぐりで家の中に入って行こうとしています。
女房が驚いて、
「お前さん! 目をちゃんと開けて歩きなされ。物に当たって
怪我をするではありませんか」
と、注意をすると、亭主は、
「しーっ! そんな大きな声を出すな! せっかく寝ているのに、
おれが目を覚ましてしまうではないか!」
と、寝言で答えたそうです。
「やっとわかった」
ある男が、こんな事を思いました。
「銭を拾うととうれしいと言うが、残念ながらおれは一度も銭を拾った事がない。
いっぺんで良いから、拾ってみたいものだ」
そして外へ出ると、目玉を皿の様に大きく見開いて町中を探しましたが、
やっぱり銭は落ちていません。
そこで男は、
「仕方ない。こうなったら自分で銭を落として、それを拾ってみるか」
と、一文銭を足元に投げて拾ってみましたが、全然うれしくはありません。
「うむ。今度はちと、遠くへ投げてみよう」
そう言って男は、一文銭を少し遠くに投げてみました。
すると一文銭はコロコロコロコロ転がって、運悪く、どぶの中に落ちてしまいました。
「しまった。大事な銭が!」
男はあわててどぶの中を探しましたが、一文銭はなかなか見つかりません。
そして日が暮れかけた頃、ようやく落とした一文銭が見つかったのです。
男はやっと探し出した一文銭をながめて、しみじみと言いました。
「やっと、わかった」
「ほらふき」
話の大げさな男が言いました。
「この前、山へ行ったら大きなイノシシが出てな、それがこっちに走ってくるんだ。
そこでおいらはあわてて、駆けてきたイノシシの角をがっちりと掴んだんだ。
角を掴むのがもう少し遅かったら、大変な事になっていたよ」
するとそれを聞いた友だちが、あきれ顔で言いました。
「バカな事を言うなよ。イノシシに角なんか、あるわけないだろうが」
「えっ? ああ、そうだった。実は角じゃなくて、羽を掴んだんだ」
「またまた、バカな事を言う。イノシシに羽なんか、どこにある」
「むむむ。それなら、どこを掴もうか?」
「字の読めぬ犬」
犬の大嫌いな男が、友だちに聞きました。
「なあ、犬がいても平気で通れる方法はないだろうか?」
「そいつは、簡単な事さ。
手の平にトラという字を書いておいて、犬がいたらそいつを見せるんだ。
すると犬は、おっかながって逃げるから」
「ふむふむ。そいつは、良い事を聞いた」
男はさっそく、手の平にトラという字を書いて出かけました。
しばらく行くと、向こうから大きな犬がやってきます。
(よし、さっそく試してやろう)
男は手の平を、犬の前に突き出しました。
すると犬は一瞬びっくりしたものの、
大きな口を開けてその手をガブリと噛んだんです。
次の日、手を噛まれた男が友だちに文句を言いました。
「やい、お前の言う様に、手にトラという字を書いて犬に見せたが、
ほれこの様に、食いつかれてしまったわ」
すると友だちは、こう言いました。
「やれやれ、それは不運な事だ。おそらくその犬は、字の読めぬ犬だろう」
「つらの皮」
若者たちが集まって、こんな話を始めました。
「世の中で一番かたい物とは、何だろう?」
一人が、言いました。
「そりゃあ、石だろう。あれよりかたい物はない」
すると、別の一人が言いました。、
「いいや、石は金づちで砕く事が出来るぞ」
「それじゃあ、一番かたいのは鉄だな」
「いいや、鉄は削ったり、刻む事が出来るぞ」
すると中の一人が、ひげづらの男を指差して言いました。
「おい、お前のひげが、一番かたいんじゃないのか?」
「何故だ?」
「そいつは、お前の鉄面皮と言われるつらの皮を突き破って、
生えているんだからな」
Posted by いとう茂 at 13:28│Comments(0)