2022年12月08日

本当の理由

新しい職場が見つかった警備員さんから電話がありました。
体力的にかなりハードなようですが、楽しく仕事をしているようでした。
「伊藤さんに話しても仕方がないことですが、誰かに本当のことを知っててもらいたくて」
前の職場をやめた本当の理由について話してくれました。
この警備員さんは日勤で、会社の就業時間と同じ勤務時間でした。
就業時間が終わると夜勤に引継ぎをして仕事は終わります。
結構長い期間勤務していましたので、何人もの夜勤と接してきたようです。
余りにも問題がありすぎる夜勤が多い、
それを知っていて知らん顔をしている会社にいたくない、この二つが辞めた理由でした。
夜勤の社員が帰るころには警備員は日勤に交代しています、
夜勤の警備員の問題点を指摘する社員も多く、
この警備員さんは苦情聞きのような立場で、
自分のことではないのにそのたびに謝っていたと言います。
当の警備員は問題点があるとは感じておらず、引継ぎで指摘しても知らん顔、
そればかりか警備上の問題も引き継ぎせずに、
会社の総務から指摘されて初めて知る始末、そのことも・・・忘れてましたわ・・・
まるで他人事。
そして問題がある警備員のことを警備会社に報告するのですが、
警備会社では一向に取りあおうとしない、
とにかく誰でもいいから夜勤がいればいい、
穴さえ開かなければいくら問題があっても指導しなかったということです。
少しでも警備の質を向上させたいと頑張ってきた警備員さんにしてみれば、
巡回もせずにスマホでゲームばかりしている夜勤の警備員と
同じ職場にいるのが嫌だった。
そして、そのことを知りながら動こうとしない会社にも嫌気がさしたようです。
特別給料がいいわけではない、しかしそのことはあまり気にしていないようで、
寡くなきを憂えず等しからざるを憂う、論語の一節で話してくれました。
顔を合わせるのは夕方と朝のわずかな時間ですが、
それがとても負担だったと言っていました。
同じ立場ではありませんが、警備員さんの言うことがよく分かりましたし、
私がその立場だったとしても同じように辞めていたと思います。
会社の中で一番弱い立場の警備員ですが、話を聞いて警備員さんの矜持を感じました。
人間を凛と立たせるものの中にはプライドがあるということだと思います。
一寸の虫にも五分の魂とでも言えばいいのでしょうか。

Posted by いとう茂 at 11:57│Comments(0)
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