2013年08月30日

控室の本より⑫

曾野綾子さんの著作に戒老録という本があります。
当時、ベストセラーとなった本で読まれた方も多いと思います。
この本と出合ったのは昭和61年、下の娘が幼稚園に行っている時
幼稚園で開催されたバザーに出品されていたのを確か50円で
買った時からだと記憶しています。

昭和47年の初版で、その後、増補新版、完本と3段階で
完成しています。
驚いたのは、曾野さんは昭和6年生まれですから初版が
出た時は41歳前後です、

その年齢で老いについて戒めをまとめられていることです。
私がバザーで買って読んだ時が33歳くらいだったでしょうか。
手元にはバザーの本と増補新版、完本の3冊がありますが、
今読んでも納得する部分が多く、高齢化が進む中で
現役世代が読んで心しておくべきことがちりばめられています。

その中から。

年寄りに限ったことではない。
若い世代でも「ありがとう」と言える人が減った。
すべてのものを、自分の独力で作っている。
と過信するところから感謝の表現は消失していく。
もしたった一つ、年寄りがほのぼのとした老後のために守るべきものを選べ、
と言われたら、私は、ためらいなく「ありがとう」と言うことを選ぶだろう。

感謝ができる限り、目も見えず、耳も聞こえず、体も動かず、
垂れ流しであっても、その人は厳然として人間であり、
美しい、見事な老年と死を体験することができる。
一般的に言って年寄りは実に感謝をしない。
というより、感謝の念が失われることが
老化の一つの症状として現れるようである。

口先だけで、不満一杯にいやみとしか思われぬ礼を言い、
「私だって礼ぐらい言ってるじゃないか」と言う老人もいる。
人間が心からなる感謝を持っているかどうか顔色一つでわかる。
千万語の「ありがとう」も、底に裏腹な感情を抱いていれば、
一言でわかってしまう。

苦しみの中から感謝することは容易ではない。
しかし、感謝こそは、最後に残されたたった一つの高貴な人間の任務である。
そして感謝すべきことの一つもない人生はない。
誰の力でここまで生かされてきたかを思えば、
誰かに何かを感謝できると思う。

曾野さんは他の本でも「その人の人生が成功であったかどうかは
臨終の間際に感謝と許しを乞うこと、どちらかしかできない時は
感謝をすること、それが出来たらその人の人生は成功と言える」
とも書いています。

感謝。
忘れずにいたいものです。

Posted by いとう茂 at 12:12│Comments(0)
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