2012年09月06日

イソップ物語より⑩

「三頭の牛とライオン」

三頭の牛は、いつも仲の良い友達でした。
外へ出る時も一緒で、決して離れることがありません。

今日も三頭そろって、草原に出かけ、草を食べていました。
そこへ、一頭のライオンがやってきました。
(さて、どいつから食べよう)

しかし、三頭が一緒では、いかにライオンでも、
うっかり飛びかかることができません。
三頭が力を合わせて向ってきたら、
ライオンの方がやられてしまうからです。

そこでライオンは言いました。
「ふん、よくも仲良く草を食べられるもんだ。
陰ではお互いの悪口を言ってるくせに」
「何だって」
三頭の牛がいっせいにライオンの方を見ました。

「俺はちゃんと知ってるぞ。一頭がいなくなると、
あとの二頭で、そいつの悪口を言い、その一頭がいなくなると、
またあとの二頭で、そいつの悪口、全くあきれたやつらだ」

それを聞いて、三頭の牛はお互いに顔を見合わせました。
「お前、俺の悪口を言っていたのか」
「とんでもない。お前こそ、俺のいないところで、悪口を言っていたのか」
「ふん、どいつもこいつも信用できん」

とうとう三頭の牛は喧嘩を始め、みんなバラバラになってしまいました。
(しめしめ、うまくいったぞ)

ライオンは、一頭ずつになった牛を次々と襲い
三頭とも食べてしまいました。


似たようなことが日本でも起こりそうです。

野山君と谷川君と山本君と渡君は学校が終わると
ワイワイ、ガヤガヤ言いながら同じ方向に帰ります。

分かれ道に来ると一人と三人になったり、二人ずつになったり、
何度もそんなことをしながら帰っていきます。

ある時、同じクラスに橋田君が転向をしてきました。
四人が帰る姿を見ながら、橋田君が言いました。

「何で分かれ道に来るといつも喧嘩するの、
いっそまっすぐな道にしたら家まで早く帰れるのに
君ら、みんな無駄なことばっかりして・・・・」
四人は黙って聞いていますが、すぐには賛成しません。

ある日、橋田君が渡君を呼び出しました。
「僕の考えは間違っていない、
道をなおさないとそのうち溝に落ちるか車の事故が起きるぞ」
渡君は言いました。
「君の言うことはわかるけど、僕も間違っていない、
二人で新しい道を考えてはどうだい」

橋田君は納得しません。
「君の親しい友達も何人か僕の考え方に
賛成してくれて、今度一緒に道をどこにつけるか考えるんだ」
渡君は驚きました。野山君や谷川君に比べると
渡君の親しい友人は少ないからです。

橋田君には言いませんでしたが、渡君は
残った親しい友人と道のことを話し合いました。
「通学路を変えるの、それも転校生に言われただけで」
「橋下君の言うことにも一理あるよな」
いろいろな意見が出ましたが、結論には至っていません。

橋田君は山本君を呼び出して言いました。
「僕は君の邪魔はしないから、安心していいよ」
ムッとした山本君は
「上から目線でものを言うな」
と心で思いました。

残っているのは野山君と谷川君です。
橋田君は野山君にはそっけない素振りを見せます。
野山君の親しい友人が橋田君と話をしているようですが、
なかなか話が合いません。

谷川君の親しい友人とも橋田君はいろいろ話をしているようですが、
友人の安田君は口が堅く話の内容を口にしないので、
谷川君には報告をしているのでしょうが、
他の友人はどうなっているのかわからないようです。

どうやら橋田君の本心は谷川君を4人から離して
新しい道づくりをしたいようですが、谷川君の親友の山本君
と三人でも仕方ないと思っているようです。
しかし、そっけなくしている野山君と組むことも
諦めてないようにも見えます。

この四人はイソップの三頭の牛ほど仲がいいわけではなく、
悪口を言い合ったり足を引っ張ったりしているので、
橋田君にすればやりやすいかもしれませんが、
仲間になることが目的ではないので、橋田君も
いろいろ策を練っているようです。

ただ、一人では道の話は進まないので誰かと
仲間にならなければいけない。
四人はそれぞれ誰が橋田君と仲間になるか
内心、とっても心配しているようです。

新しい道の話でも橋田君は強気で物を言ってきそうですが、
どこまで強気で押し通せるか、それにも四人は
関心を持っています。
  
Posted by いとう茂 at 12:22Comments(0)