2012年09月18日

6年4組物語②

この物語はフィクションであり、
登場人物等は架空の人物です。


修学旅行の検討委員会まであと二日です。
古谷君が自転車で走っていると、
向こうから杉田さんが歩いてきます。

「こんにちわ古谷君、どう、コース考えてる」
「考えてるんやけどなぁ、9県の壁があるねん」
古谷君はどうやら苦戦をしているようです。
「あんなぁ、古谷君この前、旅行社の人の話聞いたやんか、
あの時な、高速バスはあかんて言うてはったけど、
観光バスとか路線バスのこと言うてはらへんかったなぁ」

「そうやったか、僕、記憶ないなぁ」
古谷君は説明の時にボールペン回しをしていたのです。
「なんや、杉田、ええコース考えたんか」
「今、ちょっと考えてることがあるねん
私を支持してくれた塚田君や佐々君それに
岸田さん、ほかの二人からも意見聞いて
ええ考えが浮かんだんよ、ちょっと気になる
ことがあるんやけど・・・・・」

「ほんまか、8日期待してるで、今まで誰も
行ってへんコース考えてや、ヤッホー」

「ちょっと喜ぶん、早すぎや、古谷君は早とちりやなぁ」
杉田さんは一人でそんなことを思いながらも秘策が
あるようで、細い目を丸くしていました。

藤田君と中山さんと山田君は塾が一緒なので
しゅっちゅう顔を合わせています。
「山田君ええコースあった」
中山さんがニコニコしながら尋ねました。

(自分で考えや、人ばっかり頼ってんと、
ほんで、時々トンチンカンなこと言うて・・・・)
心の中で山田君はつぶやきました。

「僕な、考え方をちょっと変えたんや、
県の壁とか費用抜きにして行きたいところとか、
食べたいものとか泊まりたいところを書き出して
つないでいったらどうかと思って」

「どういうことっすか」藤田君が聞きました。

「あんな、食べたいものやったら僕ウナギが好きやねん」
「ウナギっすか、僕も大好きっす、最高っす」

「しまいまで聞いてぇな、藤田君。ウナギやろ、それに中華
も好きやねん」
「マジっすか、中華、最高っす」
「藤田君、まだ続きがあるねん、黙って聞いてくれる、
泊まるところは場所とちごうて温泉とかホテルとか民宿とか
そんで、僕的には旅館か民宿がええねん、地図に
食べるものは〇泊まるところは■行きたいところは△
つけてコースを考えてみたんや」

「ほんで、ほんで、コース組めたん、さすが、山田君やわ」
「まぁ一応、今度の委員会で発表するわ、
せやけど多数決になったら
谷口君と2票しかないし、誰かと組まんとあかんけど」

「コースがよかったら組むで、うちは園山君と泉谷くんもいるし」

(誰でもコースが良かったら組んでくれよるの決まってるやん)
おなかではそう思いながらも笑顔で山田君は
「ありがとう、頼むわ」

いよいよ8月8日です。
北川君はみんなにコースを考えたか確認をしました。

「北川君、この前の説明会で、高速バスはあかんて
旅行会社の野口さん言うてはったけど、
観光バスの貸切や、路線バスはええんやろ」

「それは、問題ないと思います、発表の前に
確認や質問ありませんか・・・・・・。では、発表して
くれる人、手を挙げてください」

1番に手を挙げたのは山田君です。
「山田君ええのできたか、発表してくれる」
山田君はノートを開きました。
その時です、ガラッと教室のドアが開き
田川先生が入ってきました。
「おはようございます」
「オーおはよう、暑いのにご苦労さんやね」
「先生、これから山田君が発表してくれはります」
そう言ったのはひょうきんな古谷君です。

「そうか、そうか先生にも聞かせてくれ」

「じゃ、発表します。米原からこだまに乗ります、
1時間30分くらいで浜松につきます。そこで昼食は
ウナギ三昧です。静岡まで行って登呂遺跡の見学をして
ネットで調べたら、駿府匠宿というところで体験学習で
陶芸、竹細工、木工細工、染色の体験コースの
どれか好きなものに参加して、宿泊は海の近くの民宿か旅館。

2日目は横浜まで新幹線で行き、中華街で昼食。その後は、
外人墓地や博物館見学で時間があれば鎌倉の大仏見学。
朝早く出れば、鎌倉を先にして中華街でもいいと思います。

3日目は東京に入って銀座や浅草を散策して、途中は築地市場で
お寿司のランチ、東京スカイツリーは多分のぼれないだろうから
東京タワーと増上寺か靖国神社参拝で羽田から伊丹まで帰ってきます。
通る県は岐阜、愛知、静岡、神奈川、東京、大阪、京都で7県です。
以上で発表を終わりますが、費用が足りるかどうかです」

みんなが拍手をしています。
そんな中、黙って聞いていた草野君が言いました。
「いい案やと思います。問題は費用ですね、
新幹線と飛行機の組み合わせは無理ではないですか、
浜松まで新幹線にして静岡横浜は在来線の乗り継ぎ
という選択肢もあると思いますが、時間がかかりますが、
いずれにしてもこのコースの組み方だと帰りは飛行機しか
無理ですからその費用を考えないといけないと思います」

「ウナギっすか、中華っすか、僕は大賛成です」
すっかり藤田君は山田君のプランが気に入ったようです。

「山田君のプランを考えるのはあとにして、プランのある人
全員から聞いて比較していこうと思います」
北川委員長は民主的に全員から
意見を出させようと考えているようです。
「ほか誰かありませんか」

「角田君あるんやろ」
清田さんが声を飛ばしました。

「角田君あったらどうぞ」

「うーん、山田君みたいに詳しくはまだぁー
できてないんですけどー」

「大丈夫だよ角田、コースを考えるのはみんなの
心を一つにして楽しい、思い出に残る
修学旅行にするためでもあるんだ、
君たちが自分で考えて旅行に行くということに価値があるんだ、
先生や学校、教育委員会で考えたら早いけれどそれでは意味がないんだ
さぁ、自信を持って発表しなさい」

田川先生に促されて角田君は前に進みました。


ちょっと忙しくなってきましたので続きは次回・・・・



  
Posted by いとう茂 at 11:00Comments(0)