2021年08月22日

逃げない 番外編

その子との出会いはもう何年も前のことです。
どんな罪を犯したかは書けませんが、一番最初にその子の
家に行って保護観察期間中の遵守事項等の話をして、
帰り際に「頑張ろう」と握手をしてから最後に保護観察の
解除の知らせを届けに行って「よく頑張ったね」と握手を
するまでの期間は長いものでした。

これまでにも未成年の担当はいくつかありましたが、
面談日は月に2回、その子は一度も遅れたり忘れたりせずに
やってきました。
最初は無口な子でしたが、面談の回数を重ねるごとに
打ち解けて口数も増えました。
劇的に、というと少し大げさかもしれませんが話が弾んで、
その子が家庭や学校のことなど話すようになった
出来事があります。

学校のクラブで陸上部に入ったと聞かされて、
保護司と対象者と言った関係だけでなく、
年齢の違いはあれ同じ競技の経験者と言った
関係も生まれたように思います。
こちらも過去の経験を話しますし、練習方法についても
話がかみ合い、話題が豊富になり親近感が増したのを
実感しました。

保護司になって10年以上、これまで担当してきた対象者が再犯に
走らず、真面目に更生してくれています。
もちろん担当してきたのは未成年から高齢者まで幅広い
年代の人たちです。
その子も再犯を起こさないと確信したことがあります。
入部から卒業まで、ずっと100m、200mを専門にして練習を
積んできました。
記録は・・・・・・。
私の記録よりもまだ遅い・・・・・。
それでも私と違い、短距離から逃げることなく練習をして、
クラブ生活を終わっています。
何度か試合の話も出ましたが、記録や順位の事は聞くことが
できませんでした。
恐らく毎回予選落ちの繰り返しだったことは、容易に想像できます。
それでも逃げずに陸上競技を続けた、これは大きな自信に
なっただろうと思います。

まちで見かけることもありませんが、きっと社会人として
自立してくれていると確信しています。
  
Posted by いとう茂 at 15:58Comments(0)