2016年04月18日

夢の続き②

青年が爺さんと別れてから3年が経ちました。
青年は町では5本の指に入るほどの金持ちになり、身なりも立派で
利口そうな馬にも乗っていました。
ある日、青年が爺さんと出会った道を通ると爺さんは相変わらず
道端の石に腰を掛けていました。

「やぁ、お若いの久しぶりじゃのう、相変わらず金儲けで忙しいか」
「おう、爺さんか見ての通りだ俺は金儲けで忙しい、おかげでこんな服も
着られるようになったし、どうだ利口そうな馬だろう」
「それは、それはよかったのう、ところでお若いの、そんなに立派になったのに
お前さんは召使いも連れずに一人で金儲けに走り回っておるのか」
「爺さん、俺は人は信用せん、これまでに何度も金や品物を持ち逃げされた、
甘いことを言うとすぐに付け上がり、人の財産をあてにしてすり寄ってくる人間
ばかりだ、金のためなら媚びたりへつらうことを何とも思わない連中ばかりで
そんな人間を信用できないね」
「そうか、お若いのお前さんは金のためには媚びたりしないのか、これを売れば
いくら儲かる、そうすればこんな暮らしができる、あれも手に入る、そんなことを
考えたことはないのか」
「そりゃ、俺だって金儲けのためなら下げたくもない頭も下げるし、心にもない
お世辞を言うこともあるさ」
「ほう、それならお前さんと持ち逃げした奴らとどこが違うんじゃ、わしには
同じように見えるがのう」

青年は先ほどまでの勢いをなくして考え込んでしまいました。
爺さんが静かに話し始めました「お前さんは自分で何もかもできると思っている、
自分ほど偉い人間はこの世にいないと思っている、わしの目にはそう映るのじゃ、
だがな、一人の力はいつまでたっても一人分じゃ、お前さんには人並み外れた力が
あるようじゃ、それでも誰かと一緒に仕事をすれば、もっと金儲けができるじゃろ、
そのためには、まずお前さんが人を信用することじゃ、お前さんが人を信用
できないのに人にお前さんを信用しろと言っても土台無理な話じゃからの」
「人を信用する?爺さんどうすれば信用できる、他人は俺の金目当てで寄ってきて
耳触りのいい話ばかりするんだ、そんな奴らを信用しろというのか」
「そうじゃ、そんな奴らも根っからの悪人ではあるまい、こちらが心を開けば
向こうも心を開くもんじゃ」
「じゃ、おれはどうすればいいんだ、教えてくれ」

「そうじゃな、お前がこいつは見どころがあるという奴を呼んで一緒に
仕事をしてくれと頼むんじゃ、一緒に汗を流してくれる人間を増やしていく、
それがお互いを信用する一番の道じゃと思うぞ、一度や二度、だまされても
諦めずに信じ続けることを忘れてはならんぞ、それと正直な商売をする、
金儲けが悪いとは思わない、商売をして金儲けをすることは正しいことだし
商売をして金儲けができないことは悪いことじゃ、よいか、お前さんは商売が
上手じゃと思う、稼いだ金をどう使おうとお前さんの勝手じゃ、だがな、
お前さんがどんなに裕福でも社会全体が貧乏なら、お前さんは幸せにはなれない」
「幸せか、そんなこと考えたこともないわ」
「そうじゃろ、お前さんが頼れるのか金だけじゃからな、3年前に夢と欲の話を
した時にお前さんは説教はたくさん、そんな顔をしておった、今でもそんな顔を
しておるがのう、金儲けをして立派な家に住みたい、美しい嫁が欲しい、
よく走る馬が欲しい、着飾る服が欲しい、これはすべてお前さんの欲じゃ、
欲は誰にも応援してもらえずに敵を増やすだけじゃ、この町に住む人がもっと
良い暮らしができないか、そのために自分に何ができる、そのために自分の
勢いを使おうと考えることが夢じゃ、お前さんには勢いがある、だが、このままじゃと
勢いを使い尽くしてしまうぞ、勢い、もし使い尽くさば、禍必ず至る、そんな諺も
あることを知っておるか」
「勢いがあるからといってやりすぎれば必ず転落するということか」
「その通りじゃ、勢いを自分の欲のためにではなく町衆のために使う、そうすれば
町衆もお前さんのために自分の勢いを使うようになる」
「爺さん、俺はこれまでに何度も町衆に金を持ち逃げされて、どれだけ悔しい思いを
してきたことか、そんな町衆を信用しろというのか」
「お前さんは、論語の成事は説かず、遂事は諌めず、既往は咎めず、という言葉を
知っておるか、これは、起きた事は語るまい、遂げられた事は止めまい、過去の過ちは
咎めまいという意味じゃ、時間が戻せないなら、終わったことは忘れようということ
でもあるのじゃ」
「爺さんは、これまでのことを水に流せと言っているのか、ひどい仕打ちを受けたのは
こちらの方だぞ、汗水たらして稼いだ金を持ち逃げされた気持ちが爺さんに分かるのか」
「そりゃ悔しかっただろう、だがな、お前さんが立派な家に住んで毎日、毎日豪勢な食事を
している姿を見て妬まない人間がいるじゃろうか、誰でもそんな生活がしたいと
望んでいるのに手に入らない、目の前ではお前さんが夢のような生活をしている、
妬むな羨ましがるなという方が無理じゃろう、あんな生活をしているのだから
少しくらい金を持ち逃げしたって罰は当たらないだろうと考えるのも無理はない気が
するがのう、確かに持ち逃げはよくないが、お前さんにも少なからず責任がある」
「ふぅーん、そんなものかの、俺にはあいつらが悪いとしか思えない」

青年は釈然としない顔で立ち去って行きました。
「もう少しかのう」爺さんがつぶやきました。

プーちゃん、コメントありがとうございました、どうすれば楽しめるか、苦中楽あり、
一度きりの人生、このことに私がもう少し早く気が付いていればもっと楽しい
人生だったかもしれません、でも、諦めないでおこうと思っています、
諦めなければ人生はどこからでもやり直しがきくように思います。
100均の飴はそこまで大げさな話ではありませんが、後悔先に立たずばかりの
人生だと心が折れそうですし、自己嫌悪になりそうで・・・・・。
これからもよろしくお願いします。


Posted by いとう茂 at 12:51│Comments(0)
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