2012年10月05日
6年4組物語⑪
この物語はフィクションであり
登場人物は架空の人物です
ピンポーン、ピンポーン。
北川君の家のベルが鳴りました。
お母さんが出ていくと、杉田さんと塚田君が立っています。
「あら、杉田さん、塚田君いらっしゃい。
省吾に会いに来てくれたの、2階にいるからどうぞ」
「ありがとう、おばさん」
塚田君が杉田さんを促して2階へ上がって行きました。
「北川君、こんにちわ」
「やぁ、二人でどうしたのですか、杉田さん元気がないようですが
どこか具合でも悪いのですか」
「ううん、大丈夫」
いきなり塚田君が切り出しました。
「早速なんやけど、修学旅行のことで来たんや…」
「修学旅行がどうしたのですか」
杉田さんの目がうつろに宙を泳いでいます。
「コースについて杉田さんとあと、支持した5人で
これまでいろいろ検討してきたんやけど・・・・
なかったことにしてほしいんや」
北川君は一瞬何を言っているのか理解ができませんでした。
「な、なかったこととは、候補から外すということですか」
「そういうことやけど・・・・」
塚田君が話している間、杉田さんはじっとうつむいたままです。
「杉田さん、どういうことですか、詳しい事情を聴かせて下さい」
「せやから・・・・今、塚田君が言うた・・・・・」
顔を紅潮させて言葉も聞き取れません。
「塚田君、委員会では夏休み前から何度も集まって、
いろんな話をしてきました。何をこの時期になって
言い出すのですか、訳が分かりません。
クラス全員でコースを考える委員を選んでのことですよ。
好き寄りのグループではありませんし、あの時は、塚田君も
賛成しましたよね」
「あの時は賛成したけど・・・・」
「けど何ですか、じゃ、塚田君から事情を聞かせてください」
「だから6人で考えて、コースの提案はよそうということや」
「それでは答えになっていません。分かってますかー!」
珍しく北川君が気色ばんでいます。
「杉田さん、君は四国のコースにかなり思い入れがあったんでは
ないんですか。委員の中からも支持しそうな声がありましたよね」
「それは・・・・・」
もう杉田さんは泣き出しそうです。
「塚田君、ほかに8人の委員がいますがどうするつもりですか」
「これから1軒ずつ回ろうと思ってるんや」
「私には理解ができません。二人は、いや6人は、クラス全員の思いを
踏みにじる気ですか、僕にはそうとしか思えません」
「とにかくそういうことなので・・・・・他も回らんとあかんので帰るわ」
北川君は、二人が帰った後、こみあげてくる感情と
釈然としない気持ちでいっぱいでした。
結局、二人は8人の家を回り北川君に言ったことと
同じことを話したようです。
委員全員から電話がありました。
その電話で、9月4日の前にもう一回委員会を開くことを伝えました。
杉田さんも呼んで、会議を9月1日に行うことになりましたが、
予想しない出来事に、動揺した委員たちはパニック状態です。
「杉田さんがコースの提案やめるんやて」
「四国のコースがなくなりそうや」
今まで堅く口を閉ざしていた委員がそれぞれに
クラスのみんなに話し始めました。
たちまち杉田さんたちのことはクラスみんなの知るところとなり、
「今頃になって何を考えてるんやろ」
「言語道断!」
「やめてしまえー」
クラスのみんなが杉田さんたちを批判し始めました。
ただ、クラスの中でも四国に魅力を感じている人も
大勢いるようで、その人たちからの批判は、よけい
強いものがありました。
「途中でやめるんやったら、最初から委員にならんかったら
よかったのに、最初に賛成しといて、あれはんかんやろ」
9月1日の教室にはいつもと違う空気が漂っていました。
北川君は、いつも通りに委員会を進めています。
「ちょっと早いのですが、コースを考えてくれた人から
コースの一覧表が出ましたので、みんなに配ります。
杉田さんのコースは私が作りました。杉田さん、
間違いはありませんか。この前みんなから出た要望は入れて
いませんので了承してください。
ほかの3人も要望を入れてくれた人もあれば
原案通りの人もいます。
確認しますが、コースを考えた人で、一覧表に訂正がある
人は今なら間に合いますのでお願いします」
「・・・・・・・・・」
「ありませんか、ではこれで9月4日の資料にします」
「北川君」杉田さんが手を挙げました。
「今回のコースのことやけど、みんなの家で言ったことと
同じで、私を支持してくれた5人の人と話して、
やっぱり、提案するのはよそうと思ったんや」
「せやからなんで、よそうと思ったかこの前も聞いたやろ」
古谷君が突っ込みました。
「そうっす、理由が知りたいっす」
藤田君も同意見です。
「ここまでみんなで考えてきたのに、
いまさら引っ込めるなんておかいいわ」
中川さんも疑問をぶつけました。
「せっかくここまで詰まってきたのに、そのことをどう
思ってるの」清田さんも詰め寄りました。
草野君が
「不愉快や」
一言で切って捨てると、黙っていた井川君も
「北川君、粛々と会議をすすめて」
もう、完全に杉田さんを無視です。
「お聞きの通りです、杉田さんたちがどう言おうと
予定通り9月4日に発表と投票を行います。
杉田さんのコースは、今、本人にも確認しましたので
僕から発表します。では以上で終わります」
杉田さんたちの思惑は結局わからずじまいでしたが、
そのこととは別の所で6年4組の修学旅行のコースは
決まっていきます。
杉田さんたちも投票するのでしょうか。
いよいよ9月4日を迎えます。
登場人物は架空の人物です
ピンポーン、ピンポーン。
北川君の家のベルが鳴りました。
お母さんが出ていくと、杉田さんと塚田君が立っています。
「あら、杉田さん、塚田君いらっしゃい。
省吾に会いに来てくれたの、2階にいるからどうぞ」
「ありがとう、おばさん」
塚田君が杉田さんを促して2階へ上がって行きました。
「北川君、こんにちわ」
「やぁ、二人でどうしたのですか、杉田さん元気がないようですが
どこか具合でも悪いのですか」
「ううん、大丈夫」
いきなり塚田君が切り出しました。
「早速なんやけど、修学旅行のことで来たんや…」
「修学旅行がどうしたのですか」
杉田さんの目がうつろに宙を泳いでいます。
「コースについて杉田さんとあと、支持した5人で
これまでいろいろ検討してきたんやけど・・・・
なかったことにしてほしいんや」
北川君は一瞬何を言っているのか理解ができませんでした。
「な、なかったこととは、候補から外すということですか」
「そういうことやけど・・・・」
塚田君が話している間、杉田さんはじっとうつむいたままです。
「杉田さん、どういうことですか、詳しい事情を聴かせて下さい」
「せやから・・・・今、塚田君が言うた・・・・・」
顔を紅潮させて言葉も聞き取れません。
「塚田君、委員会では夏休み前から何度も集まって、
いろんな話をしてきました。何をこの時期になって
言い出すのですか、訳が分かりません。
クラス全員でコースを考える委員を選んでのことですよ。
好き寄りのグループではありませんし、あの時は、塚田君も
賛成しましたよね」
「あの時は賛成したけど・・・・」
「けど何ですか、じゃ、塚田君から事情を聞かせてください」
「だから6人で考えて、コースの提案はよそうということや」
「それでは答えになっていません。分かってますかー!」
珍しく北川君が気色ばんでいます。
「杉田さん、君は四国のコースにかなり思い入れがあったんでは
ないんですか。委員の中からも支持しそうな声がありましたよね」
「それは・・・・・」
もう杉田さんは泣き出しそうです。
「塚田君、ほかに8人の委員がいますがどうするつもりですか」
「これから1軒ずつ回ろうと思ってるんや」
「私には理解ができません。二人は、いや6人は、クラス全員の思いを
踏みにじる気ですか、僕にはそうとしか思えません」
「とにかくそういうことなので・・・・・他も回らんとあかんので帰るわ」
北川君は、二人が帰った後、こみあげてくる感情と
釈然としない気持ちでいっぱいでした。
結局、二人は8人の家を回り北川君に言ったことと
同じことを話したようです。
委員全員から電話がありました。
その電話で、9月4日の前にもう一回委員会を開くことを伝えました。
杉田さんも呼んで、会議を9月1日に行うことになりましたが、
予想しない出来事に、動揺した委員たちはパニック状態です。
「杉田さんがコースの提案やめるんやて」
「四国のコースがなくなりそうや」
今まで堅く口を閉ざしていた委員がそれぞれに
クラスのみんなに話し始めました。
たちまち杉田さんたちのことはクラスみんなの知るところとなり、
「今頃になって何を考えてるんやろ」
「言語道断!」
「やめてしまえー」
クラスのみんなが杉田さんたちを批判し始めました。
ただ、クラスの中でも四国に魅力を感じている人も
大勢いるようで、その人たちからの批判は、よけい
強いものがありました。
「途中でやめるんやったら、最初から委員にならんかったら
よかったのに、最初に賛成しといて、あれはんかんやろ」
9月1日の教室にはいつもと違う空気が漂っていました。
北川君は、いつも通りに委員会を進めています。
「ちょっと早いのですが、コースを考えてくれた人から
コースの一覧表が出ましたので、みんなに配ります。
杉田さんのコースは私が作りました。杉田さん、
間違いはありませんか。この前みんなから出た要望は入れて
いませんので了承してください。
ほかの3人も要望を入れてくれた人もあれば
原案通りの人もいます。
確認しますが、コースを考えた人で、一覧表に訂正がある
人は今なら間に合いますのでお願いします」
「・・・・・・・・・」
「ありませんか、ではこれで9月4日の資料にします」
「北川君」杉田さんが手を挙げました。
「今回のコースのことやけど、みんなの家で言ったことと
同じで、私を支持してくれた5人の人と話して、
やっぱり、提案するのはよそうと思ったんや」
「せやからなんで、よそうと思ったかこの前も聞いたやろ」
古谷君が突っ込みました。
「そうっす、理由が知りたいっす」
藤田君も同意見です。
「ここまでみんなで考えてきたのに、
いまさら引っ込めるなんておかいいわ」
中川さんも疑問をぶつけました。
「せっかくここまで詰まってきたのに、そのことをどう
思ってるの」清田さんも詰め寄りました。
草野君が
「不愉快や」
一言で切って捨てると、黙っていた井川君も
「北川君、粛々と会議をすすめて」
もう、完全に杉田さんを無視です。
「お聞きの通りです、杉田さんたちがどう言おうと
予定通り9月4日に発表と投票を行います。
杉田さんのコースは、今、本人にも確認しましたので
僕から発表します。では以上で終わります」
杉田さんたちの思惑は結局わからずじまいでしたが、
そのこととは別の所で6年4組の修学旅行のコースは
決まっていきます。
杉田さんたちも投票するのでしょうか。
いよいよ9月4日を迎えます。
Posted by いとう茂 at 11:25│Comments(0)