2019年06月28日

独楽吟

独楽吟(どくらくぎん) 『橘曙覧(たちばなあけみ)
遺稿志濃夫廼舎歌集』より引用です。 
橘曙覧の「独楽吟」とは「たのしみは」で始まって
「・・・とき」で終わる形式でよんだ和歌のことです。
曙覧の生活や家族の幸せ、学問への態度などが
よみ込まれています。
城山三郎の小説に、「粗にして野だが卑ではない」
という作品がありますが、橘という人間にも、この言葉が
似合うように思います。
全首で52首あります、いくつかずつ紹介していきます。

・たのしみは 艸のいほりの筵(むしろ)敷きひとりこゝろを
靜めをるとき
  ※艸=「草」の古字 草の庵は粗末な草葺きのいおりをさす 
※筵=むしろ,莚はガマやワラなどで編んだ敷物で,
筵は竹製である。

・たのしみは すびつのもとにうち倒れゆすり起すも知らで寝し時
  ※すびつ=炭櫃(すみびつ)がつづまったもの。
大きな角火鉢のこと ※うち倒れ=いつのまにか正体もなく
寝てしまったようす。
こたつのそばで居眠りをしてしまうと,妻がそっと何かを
掛けてくれるが,気付かず居眠りを続けている。

・たのしみは 珍しき書(ふみ)人にかり始め一ひらひろげたる時
   ※珍しき書=貴重でなかなか手に入らない書籍 
始め一ひら=一頁目のこと

・たのしみは 紙をひろげてとる筆の思ひの外に能くかけし時
   ※私達も手紙などの文を書こうとするとなかなか上手に
書けないので困ることが多いが,それが,思いの外上手く書けた時。

・たのしみは 百日(ももか)ひねれど成らぬ歌のふとおもしろく
出(いで)きぬる時
   ※百日=幾日も,幾日も ※ひねる=俳句などをよむこと

・たのしみは 妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時
   ※妻子=妻や子ども,家族中での意

・たのしみは 物をかゝせて善き價(あたい)惜しみげもなく人のくれし時
   ※物をかゝせて善き價=書を書いて高い礼金を人がくれた・・・
高く評価してくれた時。

・たのしみは 空暖かにうち晴し春秋の日に出でありく時
   ※うち晴し=「うち」は強調 ※出でありく=ぶらぶら散歩する

・たのしみは 朝おきいでゝ昨日まで無りし花の咲ける見る時
   ※無かりし花の=咲いていなかった花の、
例えば朝顔やハスの花など 

・たのしみは 心にうかぶはかなごと思ひつゞけて煙艸すふとき
   ※はかなごと=「果無事」と漢字で書く。取るに足りない
些細なこと。 ※煙艸=煙草

・たのしみは 意(こころ)にかなふ山水のあたりしづかに見てありくとき
    ※意にかなふ=気に入ること ※山水=自然の風景
  
Posted by いとう茂 at 20:57Comments(0)