2022年09月07日

さらしのご縁

最近では一般家庭でさらしを使うことはほとんどないと思います。
小学校の家庭科の時間で運針に使っていた布です。
1反でおよそ10m、昔は肌襦袢にするとか浴衣の肩当てにする、
布おむつを作る、たまに・・・ふんどしにするという人もいましたが、
いつの間にかそれらの需要はなくなりました。
コロナでマスクを手作りする人が増えた時期があり、
その時は少し復活しましたが、ほとんど昭和の遺物になろうとしています。
そのさらしがつないでくれたご縁があります。
40年以上前になるかと思いますが、
大津市のお隣の草津市の会社から電話がかかりました。
距離は近いのですが電話帳はエリアが違うので別になります。
草津エリアの店に電話をしたが、なかったから私の所に連絡が来たのか・・・
これがご縁の始まりでした。
注文数は50反で、いくつか見本を見せて欲しいということでした。
当時はさらしの種類もいくつもあり何反か言われた住所に持って行き、
預けて帰ってきました。
神社の鈴の緒にするために2・3反売れることはよくありましたが、
いきなり50反・・・・何に使うのだろう。
2・3日すると電話があり、これを50反お願いしますと注文をもらいました。
「あの~、50反も何に使わはるんですか」
「あー、職人さんが顔を巻くのに使うんで、使い捨てですから結構いるんです」
事務員さんはそう答えましたが、まさか顔に巻いて遊ぶわけはないし・・・
この疑問は半年ほどしてから解けました。
会社は塗装関係の仕事をしていて、
吹付などで顔にペンキがかからないようにするために巻いていたのです。
その際にさらした薬の匂いがしないものを選ぶために見本が欲しかったということです。
しかし、この40年の間には会社名が変更になったり、草津から竜王に移転して、
さらに今は愛知川の向こうの物流センターに変わっています。
職人も代替わりしていますし、事務員さんも当時とは違うはずです。
それでも、毎月50反、多い時には100反の注文があります。
さらしが取り持つご縁は摩訶不思議なものがあります。
  
Posted by いとう茂 at 15:34Comments(0)