2012年06月17日
昔、昔あるところに③
武腰家の長女の朋美が、おじいさんの
七衛門に尋ねました。
「おじいちゃん、根回しって言葉の意味知ってる」
「朋美は難しい言葉知ってるな、あのな、
根回しというのは、ねまわしとちごうて、
こんまわして言うんや、根気ていう言葉知ってるやろ、
あのこんや。」
「そんで、どういう意味なん」
「子供は知らんでええ、小学生のくせに
朋美はませてるな」
「おじいちゃん、ホンマは知らんのやろ」
「ワシを馬鹿にしたらあかん、昔は
寺子屋で子供に勉強教えてたんやぞ」
「ふーん、おじいちゃん江戸時代の生まれか、見かけ通りやね」
「朋美、それどういう意味や」
「鏡見てきぃな」
「・・・・・・・・」
朋美は納得がいきません。
お母さんの尚代に聞きに行きました。
「おかあちゃん根回してどういう意味なん」
「朋美、難しい言葉知ってるんやな」
「根回し言うたら、ほれ、これや」
「携帯のストラップやんか、それが根回しなん」
「そうやで、おかあちゃんのこれヨン様やで、
お父ちゃんと違うて、えらいカッコええやろ」
「どうでもええけど、ヨン様てもう古いで、せやけど、さすがおかあちゃんやわ、
おじいちゃんに聞いたら、こんまわし、ていわはるんやで」
「おじいちゃんの言うことはあんまり信用せんほうがええで
この前も、頭が痛い風邪かないうて、角の薬局に行ってくるわ
ていわはるし、頭痛やったらジキニンがええでていうたら、
薬局でジキニンて言わんとカクニンて言うたらしくて、
薬局からジキニンでええか確認の電話があったんやで」
「ふーん」
その日の夕食の時でした、朋美が父の昭夫に突然
「お父さん携帯電話見せて」と言いました。
急な振りで、お父さんは別の意味であわてましたが、
そこはそれ、やんわり
「なんで」と返しました。
朋美は「携帯の根回しを見せてほしいねん」
得意げに言いました。
「あー朋美、根付けのことか」
急にお父さんは安心した様子です。
感受性が鋭いお母さんの目がキラッ
そうとも知らずにお父さんは、雄弁に話し始めました。
「朋美、これはストラップや、根付けも似たようなもんやけど、
昔の人は煙草入れとかにつけて帯に挟んで落とさんようにしてたんや」
「お父ちゃん、それ根回しと違うの、根付けて言うんか」
「そうやで、根回し言うのはな、朋美、植木を植え替えるときに
地面から抜いてすぐに植え替えると、抜いたときに根が傷んで
木が弱ってるさかいに、根をぐるっと回して土を詰め込んで
荒縄で縛って根が元気になるまでじっとさせとくんや、
人間でいうたら、怪我したら包帯で巻いておくやろ、あれと同じで
植木を枯らさんようにする植木屋さん用語や。
今では、物事をあんじょう進めるために
事前にいろんなところに手をまわしておくことに使われて、人によったら
あんまりええ意味やないと思うてる人もいるけどホンマは違うんやで」
「やっぱり、こんまわしとちごた、お父さんさすがやわ、
おじいちゃんもお母さんも勉強になったやろ」
おじいさんは禿げ上がったおでこを真っ赤にしてうつむいています。
お母さんもバツの悪そうな顔をしています。
朋美が二人の顔をじっと見つめています。
お母さんが「私、根回し嫌いやねん」
ポツリと言いました。
七衛門に尋ねました。
「おじいちゃん、根回しって言葉の意味知ってる」
「朋美は難しい言葉知ってるな、あのな、
根回しというのは、ねまわしとちごうて、
こんまわして言うんや、根気ていう言葉知ってるやろ、
あのこんや。」
「そんで、どういう意味なん」
「子供は知らんでええ、小学生のくせに
朋美はませてるな」
「おじいちゃん、ホンマは知らんのやろ」
「ワシを馬鹿にしたらあかん、昔は
寺子屋で子供に勉強教えてたんやぞ」
「ふーん、おじいちゃん江戸時代の生まれか、見かけ通りやね」
「朋美、それどういう意味や」
「鏡見てきぃな」
「・・・・・・・・」
朋美は納得がいきません。
お母さんの尚代に聞きに行きました。
「おかあちゃん根回してどういう意味なん」
「朋美、難しい言葉知ってるんやな」
「根回し言うたら、ほれ、これや」
「携帯のストラップやんか、それが根回しなん」
「そうやで、おかあちゃんのこれヨン様やで、
お父ちゃんと違うて、えらいカッコええやろ」
「どうでもええけど、ヨン様てもう古いで、せやけど、さすがおかあちゃんやわ、
おじいちゃんに聞いたら、こんまわし、ていわはるんやで」
「おじいちゃんの言うことはあんまり信用せんほうがええで
この前も、頭が痛い風邪かないうて、角の薬局に行ってくるわ
ていわはるし、頭痛やったらジキニンがええでていうたら、
薬局でジキニンて言わんとカクニンて言うたらしくて、
薬局からジキニンでええか確認の電話があったんやで」
「ふーん」
その日の夕食の時でした、朋美が父の昭夫に突然
「お父さん携帯電話見せて」と言いました。
急な振りで、お父さんは別の意味であわてましたが、
そこはそれ、やんわり
「なんで」と返しました。
朋美は「携帯の根回しを見せてほしいねん」
得意げに言いました。
「あー朋美、根付けのことか」
急にお父さんは安心した様子です。
感受性が鋭いお母さんの目がキラッ
そうとも知らずにお父さんは、雄弁に話し始めました。
「朋美、これはストラップや、根付けも似たようなもんやけど、
昔の人は煙草入れとかにつけて帯に挟んで落とさんようにしてたんや」
「お父ちゃん、それ根回しと違うの、根付けて言うんか」
「そうやで、根回し言うのはな、朋美、植木を植え替えるときに
地面から抜いてすぐに植え替えると、抜いたときに根が傷んで
木が弱ってるさかいに、根をぐるっと回して土を詰め込んで
荒縄で縛って根が元気になるまでじっとさせとくんや、
人間でいうたら、怪我したら包帯で巻いておくやろ、あれと同じで
植木を枯らさんようにする植木屋さん用語や。
今では、物事をあんじょう進めるために
事前にいろんなところに手をまわしておくことに使われて、人によったら
あんまりええ意味やないと思うてる人もいるけどホンマは違うんやで」
「やっぱり、こんまわしとちごた、お父さんさすがやわ、
おじいちゃんもお母さんも勉強になったやろ」
おじいさんは禿げ上がったおでこを真っ赤にしてうつむいています。
お母さんもバツの悪そうな顔をしています。
朋美が二人の顔をじっと見つめています。
お母さんが「私、根回し嫌いやねん」
ポツリと言いました。
Posted by いとう茂 at 22:45│Comments(0)