2016年12月22日
どこで笑うか、何が面白いか②
知的レベルの検証の続きです。
今年を振り返って苦しいこと、悲しいこともありましたが、
せめて年の暮れは笑って新しい年を迎えられたら、
そんな願いを込めて、江戸小話から私が思わず
笑ってしまった話をアップします。
「尻違い」
あるところに、頭の弱い息子がおりました。
親父さんがアメをこしらえてかめの中に入れ、
高い棚の上にあげておきました。
ある日の事。
息子がしきりと、
「ああ、なめたい、なめたい。アメがなめたい」
と、言うので、親父さんは仕方なく、
「わかった。今、かめを下ろしてやるから、お前は下にいて受け取るんだぞ」
「うん。わかったよ」
親父さんは棚の上に上がって、かめをかかえると、
「それ、いいか。こっちへ来て、しっかり尻を押さえるんだ」
すると、下から息子が言いました。
「ああ、いいよ。しっかり押さえるよ」
そこで親父さんは、そろそろと手を伸ばしてかめを下ろしました。
「どうだ? しっかり押さえたか?」
「押さえたよ」
息子が言うので、親父さんが安心して手を離すと、
ガシャーン!
かめは土間に落ちて粉々に砕け、アメはみんな流れてしまいました。
親父さんは、かんかんに怒って言いました。
「あれほど言ったのに、お前は、どうして尻を押さえていなかったんだ!」
すると息子は、しっかりと両手で自分の尻を押さえたまま言いました。
「父ちゃん、見とくれよ。おれはこんなにしっかり尻を押さえていたんだ」
「貧乏神」
ある仲の良い夫婦がいました。
夫婦はよく人の世話もしますし、商売にも精を出すのですが、
どういうものかいつも貧乏でした。
女房は、ひどく心配して言いました。
「これはきっと、あたしらの家に貧乏神がいるに違いないよ」
「どうも、そうらしいな。よし、さっそく追い出してやろう」
そこで夫婦は生の杉葉を燃やして煙を出し、
その煙を家のすみからすみへ行き渡らせました。
そして竹ほうきで、そこら中を叩いて回りました。
「貧乏神よ、出てこい! 貧乏神よ、出てこい!」
すると何やら汚い物が、ドスン! と、土間に転がり落ちて来ました。
「それっ、貧乏神だ。叩き出せっ!」
二人して追い立てられたので、さすがの貧乏神も、
「たまらん、たまらん」
と、頭をかかえて外に逃げ出しました。
すると夫婦は、ぴたりと戸を閉めて、
「これで、貧乏はお終いじゃ」
「これで、貧乏とはおさらばよ」
と、大喜びです。
でも、しばらくして、
トントン トントントン トントントントン
と、表戸を叩く音がします。
「誰だ」
亭主が戸口を細めに開けると、
「はい、貧乏神でございます」
と、先ほどの貧乏神が立っていたのです。
亭主はびっくりして、怒鳴りつけました。
「お断りじゃ! お断りじゃ! もう二度と、この家に入ってはならぬ!」
すると貧乏神は、涙声で言いました。
「はい。長い事お世話になりました。わたしはこれでおいとまいたします。
・・・でも、あとに残したせがれどもが十人ほどいますので、
どうぞよろしくお願いいたします」
「泥棒のおあいそ」
夜中に亭主は、何やら怪しい物音に目を覚ましました。
ゴシゴシゴシゴシ
ゴシゴシゴシゴシ
それは、のこぎりで壁を切り破っている音です。
「ははあーん。さては泥棒だな」
亭主は起き上がると、壁ににじり寄って身構えました。
やがて壁の一部がガサッと崩れ落ちて、
その穴から手がにゅーと入ってきました。
亭主はその手を、ギューッと掴んで、
「女房、そこの銭、二百文寄こせ」
亭主の声で、女房は驚いて飛び起きました。
「えっ、泥棒? まあ、怖い」
「えい、いいから早く寄こせ、二百文、二百文」
女房が震える手で二百文を差し出すと、
亭主はそれを泥棒の手に握らせて言いました。
「おれは目を覚まして得をしたが、お前は泥棒をしそこなって損をしたな。
さあ、この二百文でかんベんせい。
だが、こんな事は二度とするでないぞ。次は許さぬからな」
やがて、逃げて行き泥棒の足音が聞こえました。
「やれやれ」
ところがしばらくすると、また足音が帰って来て、
壁の穴から、にゅーっと手を出すではありませんか。
「えい、ずうずうしい奴だ! 次は許さぬと言っただろう!」
亭主が腹を立てて、壁の穴に近づくと、
「これはほんの駄菓子でございますが、お子さまがたにあげて下さい。
先ほどは、まことにありがとうございました」
と、お菓子の入った紙包みを差し出したそうです。
「千手観音」
あるところに、ひどく貧乏なお寺がありました。
その日の食べる物にも困った和尚さんは、
(ここは思い切って、千手観音さまのお開帳をやって人を集めよう)
と、決心しました。
この観音さまは寺代々の宝物で、参詣の人にも見せた事がありませんでした。
さていよいよ、千手観音さまのお開帳を始めますと、
「ありがたいお姿が拝める」
と、近隣諸国から行列を作って、人々が参詣に集まって来ました。
おかげでお寺は、押すな押すなの大賑わいです。
ある日の事、参詣人の一人が和尚さんに尋ねました。
「千手観音という、この仏さまは、お手が千本もございますそうで」
「さよう」
「それなのに、お足の方はたったの二本。これはまあ、
どうしたわけでございましょうか」
尋ねれた和尚さんは観音さまに一礼してから、真面目な顔で答えました。
「それは、良いところヘお気がつかれました。そのおあしが足りませぬので、
こうしてお開帳をいたしたのでございます」
今年を振り返って苦しいこと、悲しいこともありましたが、
せめて年の暮れは笑って新しい年を迎えられたら、
そんな願いを込めて、江戸小話から私が思わず
笑ってしまった話をアップします。
「尻違い」
あるところに、頭の弱い息子がおりました。
親父さんがアメをこしらえてかめの中に入れ、
高い棚の上にあげておきました。
ある日の事。
息子がしきりと、
「ああ、なめたい、なめたい。アメがなめたい」
と、言うので、親父さんは仕方なく、
「わかった。今、かめを下ろしてやるから、お前は下にいて受け取るんだぞ」
「うん。わかったよ」
親父さんは棚の上に上がって、かめをかかえると、
「それ、いいか。こっちへ来て、しっかり尻を押さえるんだ」
すると、下から息子が言いました。
「ああ、いいよ。しっかり押さえるよ」
そこで親父さんは、そろそろと手を伸ばしてかめを下ろしました。
「どうだ? しっかり押さえたか?」
「押さえたよ」
息子が言うので、親父さんが安心して手を離すと、
ガシャーン!
かめは土間に落ちて粉々に砕け、アメはみんな流れてしまいました。
親父さんは、かんかんに怒って言いました。
「あれほど言ったのに、お前は、どうして尻を押さえていなかったんだ!」
すると息子は、しっかりと両手で自分の尻を押さえたまま言いました。
「父ちゃん、見とくれよ。おれはこんなにしっかり尻を押さえていたんだ」
「貧乏神」
ある仲の良い夫婦がいました。
夫婦はよく人の世話もしますし、商売にも精を出すのですが、
どういうものかいつも貧乏でした。
女房は、ひどく心配して言いました。
「これはきっと、あたしらの家に貧乏神がいるに違いないよ」
「どうも、そうらしいな。よし、さっそく追い出してやろう」
そこで夫婦は生の杉葉を燃やして煙を出し、
その煙を家のすみからすみへ行き渡らせました。
そして竹ほうきで、そこら中を叩いて回りました。
「貧乏神よ、出てこい! 貧乏神よ、出てこい!」
すると何やら汚い物が、ドスン! と、土間に転がり落ちて来ました。
「それっ、貧乏神だ。叩き出せっ!」
二人して追い立てられたので、さすがの貧乏神も、
「たまらん、たまらん」
と、頭をかかえて外に逃げ出しました。
すると夫婦は、ぴたりと戸を閉めて、
「これで、貧乏はお終いじゃ」
「これで、貧乏とはおさらばよ」
と、大喜びです。
でも、しばらくして、
トントン トントントン トントントントン
と、表戸を叩く音がします。
「誰だ」
亭主が戸口を細めに開けると、
「はい、貧乏神でございます」
と、先ほどの貧乏神が立っていたのです。
亭主はびっくりして、怒鳴りつけました。
「お断りじゃ! お断りじゃ! もう二度と、この家に入ってはならぬ!」
すると貧乏神は、涙声で言いました。
「はい。長い事お世話になりました。わたしはこれでおいとまいたします。
・・・でも、あとに残したせがれどもが十人ほどいますので、
どうぞよろしくお願いいたします」
「泥棒のおあいそ」
夜中に亭主は、何やら怪しい物音に目を覚ましました。
ゴシゴシゴシゴシ
ゴシゴシゴシゴシ
それは、のこぎりで壁を切り破っている音です。
「ははあーん。さては泥棒だな」
亭主は起き上がると、壁ににじり寄って身構えました。
やがて壁の一部がガサッと崩れ落ちて、
その穴から手がにゅーと入ってきました。
亭主はその手を、ギューッと掴んで、
「女房、そこの銭、二百文寄こせ」
亭主の声で、女房は驚いて飛び起きました。
「えっ、泥棒? まあ、怖い」
「えい、いいから早く寄こせ、二百文、二百文」
女房が震える手で二百文を差し出すと、
亭主はそれを泥棒の手に握らせて言いました。
「おれは目を覚まして得をしたが、お前は泥棒をしそこなって損をしたな。
さあ、この二百文でかんベんせい。
だが、こんな事は二度とするでないぞ。次は許さぬからな」
やがて、逃げて行き泥棒の足音が聞こえました。
「やれやれ」
ところがしばらくすると、また足音が帰って来て、
壁の穴から、にゅーっと手を出すではありませんか。
「えい、ずうずうしい奴だ! 次は許さぬと言っただろう!」
亭主が腹を立てて、壁の穴に近づくと、
「これはほんの駄菓子でございますが、お子さまがたにあげて下さい。
先ほどは、まことにありがとうございました」
と、お菓子の入った紙包みを差し出したそうです。
「千手観音」
あるところに、ひどく貧乏なお寺がありました。
その日の食べる物にも困った和尚さんは、
(ここは思い切って、千手観音さまのお開帳をやって人を集めよう)
と、決心しました。
この観音さまは寺代々の宝物で、参詣の人にも見せた事がありませんでした。
さていよいよ、千手観音さまのお開帳を始めますと、
「ありがたいお姿が拝める」
と、近隣諸国から行列を作って、人々が参詣に集まって来ました。
おかげでお寺は、押すな押すなの大賑わいです。
ある日の事、参詣人の一人が和尚さんに尋ねました。
「千手観音という、この仏さまは、お手が千本もございますそうで」
「さよう」
「それなのに、お足の方はたったの二本。これはまあ、
どうしたわけでございましょうか」
尋ねれた和尚さんは観音さまに一礼してから、真面目な顔で答えました。
「それは、良いところヘお気がつかれました。そのおあしが足りませぬので、
こうしてお開帳をいたしたのでございます」
Posted by いとう茂 at
15:43
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