2017年07月11日

「能行不退(のうぎょうふたい)」~能く行じて退かず~

この前、琵琶湖ホテルで会合があった帰りにフロントへ
行くと、名刺の大きさの紙に能行不退と墨で書かれたものが
置いてありました。
ご自由にお持ちくださいと添えられていましたので1部頂いてきました。
二つ折りになっていて、中には以下の説明がありました。

「能く行い能く言うは国の宝なり」・・・
これは伝教大師最澄さまが示された言葉で、「国宝とは何物ぞ、
宝とは道心なり。道心ある人を名づけて国宝となす」との
教えとともに特に有名です。
宝石で飾られた金銀のお皿が10枚あっても、それは国の宝ではない。
国の宝とは誰もが持って生まれた善の心に目覚め善心を受持つづける
「道心ある人」であり、社会で「能(よ)く行い能(よ)く言う」人こそ、
その国の大切な宝となり力となる、との教えです。
「不退」とは、途中で諦めずひたむきに前へ進むこと。
たとえくじけそうになっても懸命に取り組む姿は真に尊く、
周囲に感動さえ与えます。

平安仏教の代表は最澄と空海、そして聖地は比叡山と高野山、
山岳仏教の象徴ともいうのでしょうか。
空海に比べて最澄は地味で足跡も空海に比べて知られていない
ように思いますが、比叡山は平安から鎌倉にかけて法然、親鸞を
はじめ現在まで脈々と受け継がれている各宗派の始祖を生んでいます。
難しい話はこのあたりで。
能行不退の意味を読んでいて、城山三郎の小説のタイトルを思い出しました。

静かに行くものは健やかに行く 健やかに行くものは遠くまで行く。
これも誰かの言葉で、城山三郎が「静かに 健やかに 遠くまで」
という本を出版しています。
大きな障害や困難があっても挑み続け、決して諦めないということが
能行不退だと思いますが、鬼のような形相で肩に力を入れて物事に
取り組んでいては、成就はおぼつかないように思います。

自然体でじっくり考えて行動する、それが静かに行くで、我欲ではなく
正しい考え方で行動する、それが健やかに行くで、そうした行動の
積み重ねがより高い目的に到達できる、それが遠くまでと考えれば
能行不退と共通点もあるように感じますが・・・・私はそう考えたいと思います。

  
Posted by いとう茂 at 20:28Comments(0)